中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

ピーク値 Peak value

【略語】Cmax

【概要】薬物動態を示す用語。薬剤使用後に得られる血中濃度の最大値。Cmaxともいう。薬が吸収、分布、代謝、排泄などの過程を経て、最高血中濃度となる。ピーク値は適切な範囲内となるようにする。

非エイズ指標悪性腫瘍 NADM/NADC: Non-AIDS Defining Malignancy/Cancer

【概要】エイズ指標疾患に入っていない悪性腫瘍・で、非エイズ関連悪性腫瘍とも呼ばれる。エイズ発病ではないが頻度が多い癌として、肛門癌、精巣腫瘍、白血病、ホジキンリンパ腫などがある。HIVのコントロールが良好となり、エイズ関連悪性腫瘍は減少しているが、これらの腫瘍が今後問題となってくる。

非核酸系逆転写酵素阻害薬 Non-Nucleic acid Reverse Transcriptase Inhibitor (NNRTI)

【概要】核酸に似た構造を持たない逆転写酵素阻害薬逆転写酵素に結合し、活性部位の立体構造を変えることにより酵素の阻害効果を発揮する。NNRTIは非常に強力にHIVの増殖を抑制する。しかし単剤ではわずかな遺伝子変異耐性となり、服用後短期間で生じる。従って他剤との併用療法が基本。またNNRTIは薬物代謝酵素であるチトクロームP450の中のCYP 3A4を誘導する作用がある。このため薬物相互作用が多く、併用薬の確認が必要。眠気、異夢、ふらつきなど中枢神経の副作用が多い。

ビクシリン®

【略号】ABPC

【概要】抗菌薬。標準的な合成ペニシリン『アンピシリン』の商品名。詳細は、『アンピシリン』を参照。

ビクテグラビル/テノホビルアラフェナミドフマル酸塩/ エムトリシタビン

【商品名及び略号】ビクタルビ®配合錠 BIC/TAF/FTC

【用法・用量】1回1錠を1日1回経口投与。食事の影響なし。

【概要】抗HIV薬インテグラーゼ阻害薬ビクテグラビル』、核酸系逆転写酵素阻害薬エムトリシタビン』、『テノホビルアラフェナミドフマル酸塩』の配合剤。

【副作用】腹部膨満感、皮膚変色、悪心、下痢、頭痛など。

非結核性抗酸菌 NTM: Non-tuberculous mycobacteria

【概要】抗酸菌は酸に抵抗性がある(=胃液でやられない)。抗酸菌は大きく、結核菌と癩(らい)菌と非結核性抗酸菌(NTM)の3種類に分けられる。非結核性抗酸菌にはアビウム・イントラセルラール(MAC=マック)が最も多く、カンサシイ、フォルツイツムなど多数あるがヒトに病気を起こすものとしては前の3つが重要。広く土壌や水中にいて、ほとんどはヒトに対しては無害であるが、免疫不全があると疾患を発症する。

非結核性抗酸菌症 NTM: Non-tuberculous mycobacteriosis

【概要】非結核性抗酸菌による病気。M.カンサシイの場合は結核に近い。M.アビウム・イントラセルラールはMACと呼ばれ、エイズで最も問題になる。HIV感染者ではCD4細胞数が100/μL以下の場合に引き起こされやすい。すでに他の疾患でエイズ発病している上にMAC症が発生することが多い。主な侵入経路は腸管で、腸間膜リンパ節、肝臓、全身臓器(特に骨髄)に広がる。症状は高熱、全身倦怠感、体重減少、下痢、腹痛、寝汗、リンパ節腫大、進行性の貧血、肝臓や脾臓の腫大など。

【診断】(1)確定診断: 細菌学的培養により診断、最近は直接PCR法を行う。(2)臨床的診断:a)糞便、汚染されていない体液、あるいは、b)肺、皮膚、頚部もしくは肺門リンパ節以外の組織から、抗酸菌染色して顕微鏡検査にて判定。(但し、結核菌か非結核性抗酸菌かは区別できない)

【治療】(1)M.カンサシイは結核と同じ治療。(2)M.フォルツイツムはオフロキサシン(商品名クラビット)が有効。(3)MACはクラリスロマイシン(あるいはアジスロマイシン)とエタンブトールリファブチン(あるいはリファンピシン)の3剤、さらにシプロキサシンやアミカシンの点滴を加えることがある。治療薬の副作用や相互作用に注意。免疫再構築症候群として本症が起こった場合には副腎皮質ステロイドを加える。それでもなお病勢が強ければARTの中断を検討する必要がある。

【予後】治療した患者の40〜60%は症状の軽減効果がある。軽快後も治療薬を続ける。但しエタンブトールは減量する。ARTで免疫能が回復できなければ、平均生存期間は4〜6ケ月である。

【予防】発症予防としてCD4細胞数が100/μL以下の場合に開始。(1)アジスロマイシン1200mgを週に1回。(2)リファブチン300mgを1日1回。結核と同様、MAC治療薬と抗HIV薬相互作用を起こす可能性があるので注意。

ヒストプラズマ症 Histoplasmosis

【概要】ヒストプラズマ(Histoplasma capsulatum)という真菌の感染症。HIV感染症では口、消化管、肝臓、骨髄、脳など全身感染を起こす。エイズ指標疾患。地域性があり日本ではほとんど患者はみられない。感染すると発熱、さむけ、寝汗、体重減少、咳、関節痛、リンパ節腫大の症状が起こる。

【診断と治療】確定診断は、1)顕微鏡検査、2)培養、3)患部又はその浸出液においてヒストプラズマを検出することである。治療はアムホテリシンB。治療有効率は60%であるが、再発率も60%以上である。治療後の平均生存期間は6〜9ケ月。

非定型抗酸菌症 Atypical mycobacteriosis: Atypical Tb

最近は『非結核性抗酸菌症』と言うようになった。詳細は、『非結核性抗酸菌症』を参照。

ヒトパピローマウイルス HPV: Human Papilloma Virus

【概要】扁平上皮細胞に感染するDNAウイルス。パピローマとは乳頭腫。ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染はタイプによって疣(いぼ)、尖圭コンジローマ、陰茎癌、子宮頸癌肛門癌を起こす。HPVは多くの人が接触によって感染する。ほとんどのHPV感染は一時的なもので免疫機構によって数年以内に排除されるが、持続感染によってわずかな人が癌に進行する。HPVのタイプは100種類以上あり、約70タイプは表皮に感染する。約30タイプが生殖器に接触感染する。危険性が低いタイプは6,11,42,43,44で、持続感染するとコンジローマを起こす。危険性が高いタイプは16,18,31,33,35,39,45,51,58,59,68で、持続感染により子宮頸部細胞の異常(=異形成)を起こし、一部時間がたつと頸癌になることがある。HPV感染の有無はHPVDNA検査で知ることができる。

表現型耐性検査 Phenotypic resistance assay

【概要】検体からウイルスを分離して培養し、その培養液中に様々な濃度の抗HIV薬を加え、どの濃度まで上げたら増殖を抑制できるかということで判定するHIVの薬物耐性検査。野生型のウイルスの抑制濃度に対し、何倍も高濃度が必要な場合(fold change)は、薬剤耐性が考えられる。薬物がない条件の増え方を100として、50まで抑える薬の濃度を50%抑制濃度(IC50と表記)、すなわちIC50は**ng/mLというように表現する。但し、非常に煩雑なので臨床的には行われていない。

標準的予防策 Standard precaution

【概要】感染の有無にかかわらず微生物が伝播する危険性を減らすための予防策で、血液汚染、体液汚染、創傷皮膚、粘膜が対象となる。「患者の血液・体液や患者から分泌排泄される湿性物質(尿・痰・便・膿)、患者の創傷、粘膜に触れる場合は感染症の恐れがある」とみなして対応する。(1)血液、体液、粘膜、正常でない皮膚に触れる場合は手袋を着用し外した後は直ちに手洗い。(2)血液や体液が飛び散るおそれがある場合は、エプロンやマスク、ゴーグルを着用。(3)血液や体液が床にこぼれた場合は、手袋やエプロンを着用し、次亜塩素消毒を行う。(4)感染性廃棄物を取り扱う場合はバイオハザードマークを使用し、分別〜処理を確実に行う。(5) 針刺し事故防止のためリキャップをせず直接廃棄する。

日和見感染症 Opportunistic infection

【概要】免疫力が正常な人では問題にならないような病原性の弱い微生物が、免疫能が衰えると害を及ぼすようになり、免疫能が回復すると収まる。これを日和見感染と言う。エイズ発病とされる日和見感染症は、カンジダ症クリプトコッカス症サイトメガロウイルス症、単純性ヘルペスウイルス感染症、非結核性抗酸菌症ニューモシスチス肺炎トキソプラズマ脳症コクシジオイデス症ヒストプラズマ症イソスポラ症結核サルモネラ菌血症など。エイズの定義に入らないが、梅毒帯状疱疹、みずいぼ、みずむし、澱風なども激しくなることがある。

日和見腫瘍 Opportunistic tumor

【概要】生体の防御能が低下している時に発生する腫瘍(ガンの一種)。エイズの定義にはカポジ肉腫悪性リンパ腫がある。1992年秋、女性の子宮頸癌が加わった。エイズの定義に入らないとして、肺がん、肝臓がん、肛門直腸がん、急性骨髄性白血病、ホジキン病も発生頻度が高く、それらは非エイズ関連悪性腫瘍(NADM)と呼ばれている。

ピラジナミド

【商品名及び略号】ピラマイド®原末 PZA

【用法・用量】1日1.5〜2.0gを1〜3回に分けて内服。他の薬剤と組み合わせて使う。

【概要】抗結核薬。

副作用】肝障害、腎障害、尿酸上昇、痛風、関節痛、食欲低下、悪心、嘔吐、色素沈着など。

ピラマイド®原末

【略号】PZA

【概要】抗結核薬『ピラジナミド』の商品名。詳細は、『ピラジナミド』を参照。

ビラミューン®錠

【略号】NVP

【概要】抗HIV薬。『ネビラピン』の商品名。詳細は、『ネビラピン』を参照。

ピリメタミン

【商品名】ファンシダール錠

【概要】マラリア治療薬のファンシダール錠は、サルファ薬のスルファドキシンと、葉酸拮抗薬のピリメタミンの2成分が配合されているが、現在販売終了している。

非淋菌性尿道炎 Nongonorrheal urethritis

【概要】クラミジアかウレアプラズマによる尿道炎。クラミジア・トラコマティスD〜K。潜伏期間:10日以上。症状は男では外尿道口から排膿、排尿時不快感だが、女ではわずかの排膿、排尿時不快感。

【診断と治療】以前は尿道擦過物、子宮腟分泌物のグラム染色、蛍光抗体法などで直接証明。淋菌・クラミジアのPCR法で診断を行う。治療は、テトラサイクリン系抗生物質を7日間投与する。

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