中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

細菌 Bacterium

【概要】バクテリア(複数形)とも言う。細胞膜の外に細胞壁があり、分類上は植物。一つの細胞で一個の生命体。細胞の中には核がなく、遺伝子はDNAである。細菌のうち、圧倒的に多くのものはヒトを含む高等生物と共存共栄している。ヒトに対して病気を起こす細菌は病原菌とよばれる。

細菌性血管腫症 Bacillary angiomatosis

【概要】皮膚の慢性の細菌感染症のひとつ。ねこひっかき病とおなじバルトネラ菌(Bartonella henselae)が原因と考えられている。細菌がかたまりになっていて血管を刺激して血管腫のような増殖が起こっている。外表からみると4mmから2cm大の赤茶色の盛り上がりで、カポジ肉腫に似ている。かゆみを伴う。皮膚病変以外に、骨、肝臓、骨髄などにおよぶことがある。HIV感染者では中等度以上の免疫不全の患者にみられる。

【診断】組織生検像。細菌培養法は陰性、あるいは2〜3週間かかるので、検査室に長期培養を指示する必要がある。

【治療】マクロライド系抗生物質(エリスロマイシンなど)またはドキシサイクリンを長期間使用。

サイクロセリン

【商品名】サイクロセリンカプセル

【用法・用量】1回250mg 1日2回経口投与

【概要】非結核性抗酸菌にも効果がある抗結核薬。

【副作用】神経障害、アレルギー反応、皮疹、肝機能障害など。

サイトカイン Cytokines

【概要】血液や免疫担当細胞同士が連絡をとりあう信号にあたる物質の総称。赤血球、白血球、血小板などの増殖を担当する物質や、リンパ球マクロファージ好中球の数を増やしたり、細胞の移動を促したり、働きを強めたり、働きを弱めたりする物質がある。複数のサイトカインが連鎖反応したり、協力したり、抑えたりする。

サイトメガロウイルス CMV: Cytomegalovirus

【概要】ヘルペス属のウイルスの一つ。略称はCMV。感染者の唾液、尿、血液、腟液、精液などに周期的なウイルスの排出がある。これらとの密接な接触により感染が起こる。一度感染すると一生涯ウイルスを持ち続ける。エイズのCMV感染症は、もともと感染していたCMVが免疫力低下にともない抑えきれずに再燃したもので日和見感染症である。生後1ヶ月以後で、肺、脾、リンパ節以外のサイトロメガロウイルス感染症はエイズ指標疾患である。主に網膜炎、肺炎(エイズでは稀)、肝炎、食道炎、副腎炎、腸炎、脳炎などを起こす。

【診断】(1)確定診断:組織による病理診断により、核内封入体をもっている巨細胞を確認。酵素組織科学的にCMVを証明。(2)臨床的診断:サイトロメガロウイルス性網膜炎は、眼底検査の特徴的臨床症状で診断できる。すなわち、網膜に鮮明な白斑が血管にそって遠心状に広がり、数が月にわたって進行し、しばしば網膜血管炎、出血又は壊死を伴い、急性期を過ぎると網膜の痂皮形成、萎縮が起こり、色素上皮の斑点が残るなどの所見がある。(3)検査診断:1) アンチゲネミア法(好中球中のCMVpp65 抗原を検出)、2) リアルタイムPCR法血漿中の定量(保険未収載)。

【治療】バルガンシクロビル(商品名: バリキサ®錠)はガンシクロビル(デノシン®点滴静注用)のプロドラッグで経口薬。1回900mgを1日2回3週間。ガンシクロビルは5mg/Kgを1日に2回、14日間点滴。ガンシクロビルに耐性のCMVでは、第二選択剤としてホスカルネットの点滴、シドフォビルが使用される。網膜炎の場合ガンシクロビルの硝子体注射、ガンシクロビル徐放剤の硝子体内移植(日本では保険適応なし)を行うこともある。ガンシクロビル(全身投与)の副作用好中球や血小板減少。ホスカルネットは腎障害。有効率は80%。またARTを行うと、免疫再構築症候群を起こすので注意。

【予防】一次予防は行わないが、重度の免疫低下がある場合(CD4+細胞<100/μLあたり)、定期的に眼科健診を受けて早期に発見することが必要。二次予防はバルガンシクロビル1回900mg、1日1回。CD4細胞数が100以上を3-6ヶ月以上継続すれば中止できる。

細胞傷害性T細胞 CTL: Cytotoxic T lymphocyte

【概要】体内にウイルスが入ったら、樹状細胞が捉えて抗原認識を行う。ヘルパーT細胞は抗原情報からB細胞抗体を作らせながら、細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導して、ウイルスを排除する免疫反応が起こる。CTLはウイルスを作っている細胞を殺しに行く阻撃班のT細胞(リンパ球)。CD8という抗原を細胞の表面に持っている。あるウイルスを作っている細胞だけを殺す場合、特異的CTLという。CTLはCAF(CD8+T Cell antiviral factor)などの物質でHIV複製を抑えるようだ。CTLはヘルパーT細胞の指示を受けるが、このCD4細胞をHIVが枯渇させるので、CTLは感染当初から弱くなる。長期非進行者ではCTLの働きが高い。CTLを誘導することもHIVワクチン開発の狙いになっている。

サブタイプO Subtype O

【概要】HIV-1グループの中の一つ。OはOutlierの略。チンパンジーに感染するサル型免疫不全ウイルスSIVに近いサブタイプがOであり、HIV-2よりはHIV-1に近い。アフリカのカメルーンではサブタイプOによるエイズが発見されている。現在発売されているHIV抗体キットでは偽陰性はない。

サルモネラ Salmonella

【概要】高熱と大腸炎(つまり下痢)を起こす腸内細菌の一種。サルモネラの中のシゲラ属はチフスを起こす。S.enteritidisは腸炎を起こす。S.typhimurium(ネズミ型チフス菌)は日和見感染症で菌血症を起こす。HIV感染者でサルモネラ菌血症を繰り返したらエイズ発病である。

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