中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

ドキシル®注

【略号】PLD

【概要】アントラサイクリン系抗がん剤。『リポソーマルドキソルビシン』の商品名。詳細は、『リポソーマルドキソルビシン』を参照。

トキソプラズマ Toxoplasma Gondii

【概要】トキソプラズマ・ゴンディという原虫。猫(感染率:35〜90%)の糞が混入した食事や、哺乳類の生肉などを食べて感染する。世界中で多くの人が既に不顕性感染をしている(一般人:7.4〜25%、食肉業者:40〜50%)。初感染の症状は、伝染性単核球症に似ている。妊婦が初感染すると胎盤を通じて胎児に感染し、先天性トキソプラズマ症(眼や脳の障害など)を起こす。エイズでは潜伏感染していたトキソプラズマの再活性化で、脳に膿瘍(のうよう=感染巣)をつくる他、肺、心臓、副腎、膵臓、睾丸などの全身感染症を起こす。

トキソプラズマ脳症 Cerebral Toxoplasmosis

【概要】エイズ指標疾患の一つ。発熱、頭痛、脳神経症状、視力障害、けいれん、意識障害などの症状がある。

【診断】確定診断は脳の組織による病理診断により、トキソプラズマを確認することである。しかし、日本では脳生検は一般的でなく、特殊な場合に限られる。臨床的診断は、次の1)2)3)を満たす場合である。1)症状:a)頭蓋内疾患を示唆する局所の神経症状、または、b)意識障害があること。2)画像診断: a)CT、MRIなどで病巣を認めるか、b)造影剤の使用で病巣が確認できること。3)その他:a)トキソプラズマに対する血清抗体陽性、または、b)トキソプラズマ症の治療によく反応することである。

【治療】脳の悪性リンパ腫と区別がつかなかったら、まずトキソプラズマと考えて治療を開始する。リンパ腫より経過がより急速で、治療による反応が得られる可能性があるからである。ピリメタミン+スルファダイアジン。厚生労働省「熱帯病治療薬研究班」より入手する。免疫能の回復まで治療は続ける。サルファ剤にアレルギーを示す患者には、クリンダマイシンを使用する。アメリカではクラリスロマイシンアジスロマイシンアトバコンダプソンなどの組み合わせが試されている。ART以前の有効率は60%、再発率80%、平均生存期間は6〜8ケ月であった。

【予防】トキソプラズマ抗体が陽性のHIV感染者のCD4細胞数が100/μL以下になったら、予防を開始することが勧められている。ST合剤内服はニューモシスチス肺炎の予防にもなる。

ドキソルビシン塩酸塩 Doxorubicin Hydrochloride(Doxil®)

【商品名及び略号】ドキシル®注 PLD

【用法・用量】カポジ肉腫に対しては、1日1回20mg/m2を静脈内投与し、その後2〜3週間休薬する。これを1コースとして投与を繰り返す。

【概要】アントラサイクリン系の静注抗癌剤。カポジ肉腫などに使用される。

【副作用】口内炎、脱毛、悪心、血液毒性など。

【その他】ドキソルビシンをリポソームに封入し、半減期を延長させ、全身性の毒性を減らし、有効性を高めたもの。脂質親和性が高いため、血中濃度以上にマクロファージなど組織によって選択的に取りこまれる。

特異度 Specificity

【概要】検査の用語。「ある検査で陰性と判定されるべきものを、正しく陰性と判定できる確率」。特異度が高いとは「陰性と判定されるべきなのに、間違って陽性と判定される可能性が低い」ということになる。逆に特異度が低いとは「陰性と判定されるべきなのに、陽性として間違った判定(偽陽性)をすることが多い」ということ。検査の精度とは、感度も特異度も高いことが理想であり、常に検査キットの改良や開発が行われている。

特定疾病療養受給 Grant-in-aid program for chronic diseases

【概要】特定疾病とは、「長期特定疾病(俗にマル長と言われている)」のことで、健康保険法で決められている制度である。長期にわたって高額な医療を必要とする血友病と人工透析治療をしている慢性腎不全が対象となっている。「特定疾病療養受療証」が交付されると医療費の自己負担が、患者の収入に応じて1カ月1万円か2万円になる(血友病は一律1万円)。加入している健康保険(社会保険事務所、保険組合、国民保険担当部署)に医師の意見書等を添えて申請する。

トラフ値 Trough value

【概要】薬物動態の用語。薬剤使用後に血中濃度が上下するときの最低値。Cminともいう。薬剤を次回の服用する直前(飲む前)に血中濃度が最も低くなる。抗HIV薬のトラフ値が低すぎると薬の有効域以下になって無効であるばかりか、耐性を誘導させる可能性がある。

トランスジェンダー Transgender

【概要】性同一性が出生時に割当てられた性別と対応しない状態を意味する言葉として用いられる。狭義には、性器の切断・手術までは望まないが自己の生来の性とは逆の性で生活することを望むもの。広義には、自分の生来の性別やそれに属する社会的、文化的性別に対して何らかの違和感や不快感を感じている人。男性から女性へ、女性から男性への移行がある。トランスセクシャル(trans-sexual)は、性器の切除・形成をしなければ自己の性別違和感を取り除くことができないほどの性同一性障害者をさす。トランスヴェスタイト(transvestite)は、外見上は自分の生物学的な性と異なる性の外見を身にまといたいと思うものを指す。広義のトランスジェンダーはトランスセクシャルとトランスヴェスタイトを含むものである。日本も「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律、平成15年7月16日法律第111号」によって、一定の要件を満たせば法的な性別の取扱いと、戸籍上の性別記載を変更できるようになった。

ドルテグラビルナトリウム

【商品名及び略号】テビケイ錠 DTG

【用法・用量】1回50mgを1日1回経口投与。

【概要】抗HIV薬インテグラーゼ阻害薬

【副作用】頭痛、嘔気、下痢、不眠。

ドルテグラビルナトリウム/アバカビル硫酸塩/ラミブジン

【商品名及び略号】トリーメク®配合錠 DTG/ABC/3TC

【用法・用量】1回1錠を1日1回経口投与。食事の影響なし。

【概要】抗HIV薬インテグラーゼ阻害薬ドルテグラビルナトリウム』、核酸系逆転写酵素阻害薬アバカビル硫酸塩』、『ラミブジン(抗HIV薬)』の配合剤。

【副作用】頭痛、嘔気、下痢、不眠、発疹、過敏症など。

トロピズム Tropism

指向性』を参照。

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