中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

空胞性脊髄症 Vacuolar myelopathy

【概要】エイズの末期に脊髄がやられた状態。脊髄のグリア細胞やマクロファージの中でHIVが増え、神経の毒である物質(例: TNFα)などを出し、神経細胞が死んで脱落する。顕微鏡でみるとポッカリ穴が空いたように見える。エイズ脳症と同じことが脊髄で起こったと理解されている。症状は進行性の上下肢のしびれ、温痛覚異常、運動麻痺、筋萎縮など。

クラミジア症 Clamydial disease

【概要】クラミジアが原因で起こる病気。クラミジアは細菌より小さくウイルスより大きい中間的な微生物で生きた細胞の中に感染する。最近は動脈硬化巣から検出され、関連が疑われている。C. トラコマティスと、C.ニューモニエが様々な感染症を起こす。性感染症としては最も頻度が高く、診断したら接触者を治療することが必要。

【病型】(1) 非淋菌性尿道炎潜伏期間は10日以上。男では外尿道口から排膿、排尿時不快感だが、女ではわずかの排膿、排尿時不快感程度である。(2)鼡径リンパ肉芽腫。(3)卵管炎から腹膜炎に及んだものでは不妊症の原因となる。(4)結膜炎、(5)肺炎。

【診断】尿道擦過物、子宮腟分泌物のグラム染色、蛍光抗体法、遺伝子診断法。

【治療】テトラサイクリン系抗生物質

クリプトコッカス症 Cryptococcosis

【概要】クリプトコッカスは鳩の糞や土壌中にいる酵母様の真菌(胞子によって増える)。ほとんどはC.ネオフォルマンス。自然界に存在し吸入して肺に病巣を作る。HIV感染症では肺炎、髄膜炎、全身感染症(骨髄、肝臓、血液)を起こす。なおクリプトコッカス髄膜炎は、エイズ指標疾患である。

【症状】髄膜炎:頭痛、嘔吐、発熱、意識障害、麻痺、行動異常、寝汗、体重減少。皮膚の炎症巣。

【診断】感染している臓器(脳脊髄液など)から菌をみつける。血清や脳脊髄液のクリプトコッカス抗原を免疫学的に測定することは、感度特異性も高いし、経過観察に有用である。

【治療】(1) アムホテリシンBの点滴、フルシトシンを併用することもある。(2) フルコナゾールの点滴。途中でイトラコナゾールの内服に切り替える。免疫能が回復しなければ再発率は80%なので、フルコナゾールを生涯続ける必要がある。抗HIV薬によりCD4細胞数が100/μL以上を3ヶ月以上に回復できれば中止できる可能性がある。

クリプトスポリジウム症 Cryptosporidiosis

【概要】原虫の一種であるクリプトスポリジウムが起こす小腸炎。人畜共通感染症。糞便感染だが汚染水道水で集団発生することがある。免疫能が正常な人では自然に回復するが、HIV感染症では治りにくく死亡に至る例もある。エイズ指標疾患(1ヶ月以上下痢を伴う場合)。

【症状】激しい下痢と腹痛、発熱、体重減少。

【診断】診断は下痢便から抗酸菌染色でみつけること。内視鏡で生検して抗酸菌染色をするのもよい。

【治療】抗HIV療法を開始して免疫能を回復させること。本症自体の治療は確立されていない。パロモマイシンアジスロマイシンなど。ニトラゾキサニドは「熱帯病治療薬研究班」から入手する。

グルクロン酸抱合 Glucronization

【概要】肝細胞における化学物質(薬物)処理の一つのやりかた。肝細胞中の滑面小細体にあるグルクロニルトランスフェラーゼ(UGT1A1)という酵素によって、薬にグルクロン酸がくっつき水溶性の物質に変わる。このような抱合型の物質は微小胆管に移動され、胆汁中に捨てられる。体内で産生されたビリルビンは非抱合型ビリルビンとして肝臓に運ばれた後、UGT1A1の作用により抱合型ビリルビンに変化する。この非抱合型ビリルビンが間接ビリルビンである。したがって間接ビリルビンの増加は、(1)UGTの先天的な異常、(2)体内でのビリルビン生成過剰=溶血、(3)肝臓での抱合異常=酵素の阻害により出現する。インジナビルアタザナビル硫酸塩などのプロテアーゼ阻害薬は(3)を起こす。

グルタールアルデヒド Glutal aldehyde

【概要】グルタラールは別称。HIVの消毒剤。2%液で30-60分浸すと効果があり、内視鏡などの医療器具の消毒に使う。皮膚や粘膜など生体には毒性があるので使えない。

クレアチニンクリアランス CCr: creatinine clearance

【概要】糸球体濾過値を反映する腎機能検査法の一つ。

【詳しく】血清と一定時間の間に溜めた尿中のクレアチニンの両方を測定することにより、単位時間あたりの糸球体の濾過量が推定できる。これをクレアチニンクリアランス(CCr)という。計算式は、次の通り。クリアランス(mL/分)=尿中濃度(mg/dL)×1分間の尿量(mL/分)÷血中濃度(mg/dL)×1.48÷体表面積。外来診療のように尿量の正確な測定と、尿中クレアチニン値測定が煩雑さを避けるため、最近は血清クレアチニン値と、性、年齢から推算するeGFRを使用することが増えた。

クロトリマゾール

【商品名】エンぺシド®トローチ

【用法・用量】1回10mgを1日5回口腔内投与。

【概要】抗真菌薬、口腔カンジダ症治療薬。

【副作用】嘔気、腹痛など。

【その他】腸管から吸収しないため他の臓器へは届かない。

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