中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

有害事象 Adverse event

【概要】「治療や処置に際して見られるあらゆる好ましくない徴候、症状、疾患、検査値異常であり、治療や処置との因果関係は問わない」と定義されている。有害事象は必ずしも治療や処置によって起こったものとは限らない。しかし有害事象をきちんと記載・報告すれば、類似の症例集積で有害作用と気づくことがある。日本での主な拠点病院で使用した抗HIV薬については、HRD(HIV関連薬)として市販後10年間まで報告することが義務づけられている。有害事象の程度は、0〜5の6段階に分けられている。
Grade 0:正常。
Grade 1:軽度、つまり治療を要さない、症状がない異常所見・検査値異常。
Grade 2:中等度、つまり最低限の治療/局所的治療/非侵襲的治療を要する。
Grade 3:高度、つまり入院や侵襲的治療/輸血/治療的内視鏡/手術などを要する顕著な症状を有する。
Grade 4:生命を脅かす代謝性/心血管系の合併症など、集中治療や緊急処置などを要する、または後遺症を残す状態。
Grade 5:有害事象による死亡。

融合阻害薬 Fusion inhibitor

【略語】FI

【概要】HIVが細胞に接着したあと、HIVの膜と細胞膜が融合する。ここをブロックする薬。T-20がそれに当たるが、2021年末現在、日本に導入されていない。

郵送検査 Postal testing

【概要】保健所や医療機関を介さずに、主にインターネットを通じて有料で提供されるスクリーニング検査。方法は指尖穿刺血を濾紙に採取し、乾燥後に業者に郵送し、業者は認可を受けた免疫クロマトグラフィー法HIV検査を行う。結果は郵送されるもの、インターネットを介するものがある。スクリーニング検査なので陽性の場合は確認検査が必要である。偽陽性を含んでいる可能性があるため、確認検査は必要である。利点は受検者の都合に合わせて実施できること、そして他人に面接しないですむことである。欠点としては受検者に正しい知識が伝わっているか不明であり、検査の結果によらずカウンセリングが不十分な点、そして陽性結果の場合、通知を受けた受検者が医療に繋がったか確認できてないことが上げられる。アメリカでは郵送検査システムや自宅検査をFDAが承認しているが、日本では所管の官庁がない。検査件数は近年増加しており、保健所等で行う無料匿名検査の件数を上回っている。

誘発採痰法 Induced sputum method

【概要】痰が出にくい人からでも十分な量の痰を得る方法。

【方法】3%の高濃度食塩水50mLを作り、超音波ネブライザーで20分かけて吸入する。肺胞に高濃度食塩水が届くと、毛細血管から水分がにじみ出て肺胞を洗い、大量の水のような痰が強い咳とともにでてくる。これを消毒したカップに受けて、水で3倍に薄め、検査(例えばPCR法)に提出する。

【特徴と応用】気管支鏡を使う検査より安全で簡単、繰り返しもでき、患者の協力も得やすい。ニューモシスチス肺炎サイトメガロウイルス結核非結核性抗酸菌などの肺炎の原因の診断や治療による効果を判定するのに使える。

輸血感染 Blood transfusion; HIV infection through –

【概要】輸血用血液の中に感染に十分な量の病原体が含まれていれば感染症が発生する。細菌のように採血時の汚染で保存中に増える場合と、病原体をもっている人からの採血が原因である。

【種類】マラリア、バベシア、梅毒、エルシニア菌、肝炎(ABC、D、G型)ウイルス、HIV-1HIV-2、HTLV-1、HTLV-2、サイトメガロウイルスEBウイルス、パルボウイルスB19、ウェストナイルウイルス、ジカウイルスその他がある。肝炎ウイルス感染について言えば30年前の50%から0.0001%以下まで低下した。現在のHIVの遺伝子検査(NAT)をすり抜ける低濃度のウイルス感染は、数年に1例以下と推定される。

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