中四国エイズセンター
HIV/AIDS(エイズ)のこと

エイズ関連用語集 ver.9

チアベンダゾール

【商品名】ミンテゾール

【用法・用量】チアベンダゾールとして体重1kg当たり1日量25〜50mgを2〜3回に分けて経口投与。服用は3日間連続服用を1クールとし、糞便内幼虫が陰転化しない場合は繰り返す。

【概要】糞線虫の駆除に用いる。虫卵と幼虫の産生を抑制する。現在販売終了している。

【副作用】吐き気、食欲不振、めまい、頭痛、倦怠感など。

チーム医療

【概要】患者に提供すべき医療を、各スタッフ(医師、看護師、薬剤師、カウンセラー、ソーシャルワーカー等の専門職)が、専門に応じて役割を分担し、患者と同じ目線にたって責任を持って行うことである。チーム医療の目的は、患者自身が服薬も含め自己管理し、自身の健康を向上・維持できるようになることである。尚、厚生労働大臣の定める施設基準を満たす施設には、ウイルス疾患指導料(330点、月1回/HIV/AIDS/患者一人)に加え、チーム医療加算(220点)を診療報酬上に加算ができる。

チトクロームP450 Cytochrome P450

【概要】肝臓における薬物を分解する酵素の一つ。脂溶性の薬物を水溶性に変えて排泄させやすくする(代謝)。別名CYP。CYPには多くの種類があり、薬物によって代謝にかかわるCYPが異なる。HIVの薬の中には、CYPを阻害する薬剤(リトナビルコビシスタットなど)があり、その薬剤と併用すると併用薬の代謝ができず、体内に薬物が残り、副作用が出る可能性がある。

治癒 Cure

【概要】病気が治ること。このためには原因が取り除かれ、治療行為が不要になること。現状ではHIV感染症は治癒せず、ウイルスの活動を抑え込み、かつ様々な障害に対処して、患者が健康で生活できる時間を長くすることが治療の目的としている。現在の薬物療法はHIVの増殖過程を止めるものである。活動を休止しているHIVが潜む細胞をリザーバーと呼ぶが、リザーバーを見つけて排除する方法が見つからない。治癒したのは白血病のために造血幹細胞移植が成功した「ベルリンの患者」だけである。現在はHIVの排除方法を探索する方向に目標が進んでいる。

中核拠点病院 Prefectural AIDS core hospital

【概要】エイズ治療拠点病院の県内まとめ役のような役割の病院。各県が指定して厚労省に報告。具体的な役割としては、チーム医療カウンセリング体制などの他に、県内の拠点病院の連絡会議や研修会を実施することである。特定感染症予防指針の見直し検討会のなかで、患者が全国14箇所のエイズ治療のブロック拠点病院に集中しているという指摘があったため、平成18年度から各都道府県に1箇所以上選定されている。

中毒性表皮壊死症 TEN: Toxic epidermal necrosis

【概要】別名LYLL症候群。薬剤に対する中毒反応で重篤な有害作用の一つ。最初は皮膚が赤くなり(紅斑)、表皮の壊死が起こり、水泡形成、全身皮膚の剥離という’やけど’のような症状。高熱、嘔吐、下痢を伴う。ST合剤やペニシリン、ネビラピンアバカビル硫酸塩で起こすことがあり、死亡例も報告されている。使用量に依存しないアレルギー機序と考えられ、原因薬剤を中止するほかに方法がない。一般に薬を開始して2週間前後で発生することが多い。TENを起こしやすい薬を処方する場合は、患者に症状を教えておき、すぐに連絡を取れるようにしておくことが重要である。

中和抗体 Neutralizing antibody

【概要】特定のタンパク質の活性を中和できる抗体で、病原体や感染性粒子の特定のタンパク質に結合し、感染性や病原性を消失させ、宿主を防御する働きをする。HIV抗体は中和抗体ではない。

長期非進行者 Long-term non-progressor

【概要】HIV感染者のおよそ5%は感染後10年以上を経過してもCD4細胞数の減少がみられない。血漿HIV RNA量が検出限界以下になることがある。またプロウイルスDNAの量が少ない。宿主ウイルスの両側の理由が考えられる。感染しているウイルスは、増殖力が弱い“欠陥HIV”であるのかもしれない。一方、生体の免疫能が高いこともわかっている。つまり、HIV特異的殺細胞能(CTL)が強い。このことはHIV感染症に免疫療法が有効であることを示唆し、ワクチン療法開発の熱意が高まっている。また、HLA-B57や日本人の約15%が保有するHLA-B35はエイズへの進行が早いことが示唆されている。詳細なメカニズムは明らかにされてはいない。

直接監視下短期化学療法 DOTS: Directly observed therapy, short course

【概要】元々、不規則な服薬による多剤耐性結核の発生を避けるために考えられた。保健サービスの戦略名。訓練を受けた医療従事者が直接患者に薬を渡し、飲み込むのを観察する。長期間にわたって有効な血中濃度を維持するためには、服薬が不規則になることは避けなければならないが、患者によっては色々な理由で、服薬維持が困難な場合がある。このような場合に訓練を受けた担当者が、患者の住居を訪れて、あるいは患者がクリニックに来院して、直接対面して服薬を支援する方法が考えられた。

治療失敗 Treatment failure

【概要】治療のゴールが達成できないこと。現時点のHIV感染症の治療目標は、日和見疾患がない、免疫機能が維持される、ウイルスが増えないことである。ウイルスが抑制できなくなることは「治療失敗」の最初のステップになる。HIV感染症の薬物療法の成功・失敗の要因は、(1)ウイルスの要因:つまり薬剤耐性など性質が悪い、(2)薬の要因:つまり薬効が劣る、(3)薬の使用法:用法や用量の間違い、そして(4)宿主の要因:つまり患者個人の事情がある。近年のガイドラインの推奨レジメンでは、費用の問題を除くと宿主要因であるアドヒアランス不良が最重要である。生活目標の喪失、抑うつ状態依存症などに焦点を当てて多面的な支援が必要である。

治療は予防 Treatment as prevention; TasP

【概要】誰もが自分の、そして相手のHIV感染の状態を知っているとは限らない。HIV感染者への早期治療は、エイズ発病回避・HIV関連疾患(腎症、神経障害など)予防という本人のためばかりでなく、性的パートナーへの感染の拡大も予防できるという考え方。検査の奨励によりなるべく早期にHIV感染者を診断し治療の機会を提供できる体制が必要である。複数の疫学研究で、抗HIV療法を受ける患者数が増えると、これに反比例するように新規感染者数が減少した。また有名なHPTN052研究では9ヶ国の異性カップル1763組を対象に無作為化比較試験を実施したところ、早期に抗HIV療法を開始することにより、性的パートナーへの感染を96%低減することが示された。南アフリカとインドのシミュレーション研究で早期治療は費用対効果比が優れているという結果が発表された。このように「治療が予防になる(Treatment as prevention)」という考えが広く受け入れられることになった。

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