HIV_AIDS関連文献

中四国エイズセンター部内学習資料:翻訳

カポジ肉腫

原題: Kaposi's Sarcoma (KS)
出典: amfAR Global Link (Last Update - November 2003)
Web: http://web.amfar.org/treatment/SubCategory/ID17.ASP
翻訳: 広島大学病院 エイズ医療対策室 石川暢恒、高田 昇

1. カポジ肉腫について

1-1. 病因

 カポジ肉腫は血管内皮細胞やその前駆細胞より発生する血管由来の炎症性新生物である。1994年にニューヨークにあるコロンビア大学のYuan ChangらはAIDSを発症した人たちのカポジ肉腫の90%以上からカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)もしくはヒトヘルペスウイルス8型 (HHV-8)と呼ばれる新しいヒトヘルペスウイルスを同定した。現在一般にHHV-8はHIV陽性、陰性ともにすべてのカポジ肉腫に存在しているといわれている。HHV-8はBリンパ球と同様血管内皮細胞へ感染することが示されている。他のいくつかの研究によってHHV-8がカポジ肉腫において根本的な病原体であることを支持されている。

 HHV-8はカポジ肉腫の病変の進展に必要な因子であるが、他の補因子も関与している。これらには血管由来の成長因子や、サイトカイン、HIV Tatタンパク、宿主の免疫抑制などが含まれる(Antman)。ある研究ではHHV-8に感染したHIV陽性男性はカポジ肉腫を発症するリスクがより強いことが示された(Jacobson)。

 

1-2. 症状

 カポジ肉腫の皮膚病変は通常、同時に身体のいくつかの場所に赤から紫(打ち身様)の色素斑やプラーク、結節としてあらわれる。色素斑は結節(時に浮腫を伴う)や特に大腿や足に存在する大きな有痛性のプラークとなる。カポジ肉腫は他の日和見感染を発症する前の、CD4細胞が比較的多いHIV陽性患者で進行する。カポジ肉腫が内臓に進展する場合は生命に危険が及ぶ。稀な例であるが、皮膚に発症することなく、臓器に発症することもある。

 

1-3. 病変の分布

 最初、カポジ肉腫は皮膚にもっとも多く発症するが、それだけでなく同時に、あるいはしばしば後半にはリンパ節、口腔、肺や消化管にも発症する。カポジ肉腫の消化管病変は診断時40%にみられ、剖検時には80%までになることが示されているが、多くは無症候性である。肺病変は病気の後半にしばしば出現するが、重篤な呼吸器症状を呈し予後不良因子である。

 

1-4. 診断

 カポジ肉腫の患者の評価には典型的に病変が出現する部位、例えば下肢や、顔面、口腔粘膜、生殖器、消化管、肺などに特に留意した徹底した検査が必要である。便潜血の検査は消化管病変のスクリーニングに有効である。内視鏡は便潜血陽性患者や消化管症状のある患者に適用される。胸部レントゲン写真は肺病変のスクリーニングに有効である。気管支鏡と胸部CTは胸部レントゲン写真が異常であったり、持続する説明のつかない呼吸器症状を呈するような患者に用いられる。カポジ肉腫に他の肺疾患(結核やカリニ肺炎など)が併存することはよくみられる(Dezube 2000)。

 皮膚生検は視覚的診断を確実にするものである。肺カポジ肉腫の診断は、気管支鏡で気管支内にチェリーレッドを呈しわずかに隆起した病変が存在していれば、通常生検無しで可能である。気管支鏡は選択すべき方法だが、ガリウムスキャンも異常な放射線画像を評価する助けとなる。胸部レントゲン写真やCT上で肺の浸潤影と結節影が存在し、肺実質にガリウムの取り込みを欠き、筋状の血痰が存在する時には、感染に起因するものが除外されれば肺カポジ肉腫が確実となる。消化管に浸潤したカポジ肉腫は内視鏡によって視覚的に診断される。(病変は粘膜下に存在するため生検はしばしば陰性となる。)

 

1-5. HAARTの効果

 多施設AIDSコホート研究(MACS)ではAIDSの発症疾患としてのカポジ肉腫の頻度は1990年代早期の100患者・年あたり26例から1996年と1997年の100患者・年あたり8例へ減少した(Jones)。加えてCDCはカポジ肉腫の発生率が1990年から1998年にかけて年9%低下したと報告した。スイスの大規模なコホート研究もHAARTにより免疫能回復後カポジ肉腫を発症するリスクは急激に減少したと報告した。

 8640人のHIV感染患者の分析により、プロテアーゼインヒビター(PIs)と非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTIs)がHIV感染者からのカポジ肉腫の発症を同等に防ぐことがわかった。全体としてカポジ肉腫の比率は1995年以前の1000患者・年あたり30から2001年には0.03へ低下した (Portsmouth)。

 その一方、ウイルス量が抑制されている患者でさえカポジ肉腫と新たに診断される例が続いており(Khanlou)、抗レトロウイルス療法が広く使用されていないアフリカでのHHV-8とHIVが流行している地域では、カポジ肉腫の発生率は急激に増加している(Chokunonga; Echimane; Sitas; Thomas; Wabinga)。

 

2. カポジ肉腫の治療

 HHV-8の全身感染がカポジ肉腫を引き起こすが、局所因子にも影響される。局所の問題としてのカポジ肉腫の治療は、比較的病変が限局した患者でさえ最善の長期的アプローチにはならない。効果的なウイルス量の抑制はカポジ肉腫の発生率の減少とカポジ肉腫病変の縮小に関係しているため、カポジ肉腫の患者はウイルス量を抑制する有効な抗レトロウイルス療法を受けるべきである。

 

2-1. 早期カポジ肉腫

 緩徐に進行するタイプや早期カポジ肉腫に対して、酷い形態となった病変や不快な病変に対しての局所治療は選択枝の一つである。治療の方針は病変の場所と性質に依存する。

 

2-2. 局所的・病変内治療

 体の露出した部位にある病変はビンブラスチンなどの化学療法剤の局所注射により治療される。皮膚カポジ肉腫に対する他の局所治療には寒冷療法(局所的液体窒素)と局所的レチノイドある。Sodium tetradecyl sulfateの病変内注射は口腔内病変の治療に用いられてきた。副作用は局所痛、潰瘍、色素脱失を含む皮膚色調の変化などがある。局所のalitretioin 0.1%gel(9-cis-レチノイン酸)投与はカポジ肉腫の治療として認められている。268人のボランティアによる12週間の研究によるとプラセボで治療された病変の奏効率が18%であるのに対してalitretioin gelでは35%であったと報告されている。

 それに続く182人の患者による研究のopen-label phaseでは、49%がポジティブな反応であった。有害事象には発赤、疼痛、掻痒があった(Walmsley)。

 

2-3. 放射線治療

 放射線は口腔内や咽頭カポジ肉腫、局在し美容的に問題となるカポジ肉腫(鼻や耳など)、有痛性で膨隆した皮膚カポジ肉腫に効果的である。副作用には粘膜炎があり重度となりうる。皮膚病変に対する放射線治療の遅発性作用には繊維化や皮膚潰瘍が含まれる。照射された領域に病変が再発することもある。

 

2-4. インターフェロン

 高用量の遺伝子組み換えヒトインターフェロンアルファ(INF-α)が1980年代後半にCD4が200cells/mm3以上のAIDS患者のカポジ肉腫治療に対して認められた。全身性のB徴候(発熱、体重減少、寝汗)を欠き、日和見感染の既往が無く、CD4が200 cells/mm3以上の患者では腫瘍はおおむね2から3ヶ月後に縮小した。腫瘍の反応不良と薬剤関連毒性はCD4が200cells/mm3以下の患者で特に目立った。約80%の患者にみられた主な副作用にはインフルエンザ様症候群(患者の25%に用量減少が必要となる)、認知障害、鬱病、骨髄毒性(好中球減少)がある。

 インターフェロンは一般に抗レトロウイルス薬と併用し低用量となる。INF-αとAZTの組み合わせに関するいくつかの研究では、カポジ肉腫に対する奏効率は40%を越えることが示されている。INF-αとAZTの組み合わせはCD4リンパ球が200 cells/mm3以下の患者の25〜30%にカポジ肉腫の縮小が誘導されたが、そのなかで高用量INF-α単独療法に反応したのは10%以下だった。この組み合わせでしばしばみられる用量制限的な好中球減少は、顆粒球・マクロファージ刺激因子(GM-CSF)によって抑止されたり回復したりする。より最近のトライアルでは骨髄抑制を起こさないような薬剤との組み合わせでインターフェロンを評価している。ACTG206の研究では患者はランダムに100万 U/dayか1000万U/dayのインターフェロンを標準量のdidanosine(ddi)とともに投与された。腫瘍の縮小率は両グループで同様に観察されたが、低用量の方が有意に忍容性に優れていた。

 

2-5. 急速進行型播種性カポジ肉腫

 カポジ肉腫の患者、特に相対的に腫瘍量が少ない患者のなかには、HAART開始後病変が縮小するのが経験されることがある。進行した症候性、特に内臓疾患を発症した患者のほとんどは、抗ウイルス療法に加えて化学療法を受ける。最適のHAARTによりカポジ肉腫の進行が抑制される可能性がある。HAARTは基礎となる免疫抑制状態に作用することにより、カポジ肉腫に対する効果的な免疫反応を引き出す。すなわち、HIV感染のコントロール不良の患者で増加がみられるカポジ肉腫刺激性のサイトカインを低下させたり、おそらくAIDS関連カポジ肉腫の因子であるHIV Tat proteinレベルを減少させたりする(Ensoli)。医師は、HAARTを受けていない進行した症候性のカポジ肉腫患者が、速やかに全身性のカポジ肉腫治療をうけるべきかどうか、あるいはHAART単独を試みるのが安全なのかどうかを決断する臨床的判断力を訓練すべきである。

 播種性カポジ肉腫の治療にはいくつかの選択枝がある。治療方法の選択は疾患の侵襲性、病変の進展の程度や位置、腫瘍に関連した症状(痛み、浮腫、消化管出血)の存在、HIVの症状、患者の免疫系の状態による。

 

2-6. 全身的な治療

 急速進行性かつ/または播種性皮膚粘膜病変に対して、もしくは腫瘍が生命維持に必要な臓器の機能を低下させる場合には、全身性の化学療法により腫瘍を縮小させることができ、救命につながる。adriamycin、bleomycin、vincristine(ABV)の組み合わせの他bleomycin、 vincristine(BV)の組み合わせ、vincristineとvinblastineの組み合わせの隔週投与が行われていたが、安全性に優れ、生活の質を改善するため、変わって初回の全身的な化学療法としてliposomal anthracyclin(DaunoXomeとDoxil)が広く用いられるようになっている。治療中の好中球減少に対して顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF)などの造血促進因子が投与される。

 ある研究では、227人がランダムにliposomal daunorubicinかABVを2週毎に投与された。効果はどちらのグループも同様であった。Liposomal daunorubicinを投与された3人の患者には著効が得られ、26人には部分的に有効であった。ABVのグループでは1人に著効が得られ、30人に部分的に有効であった。ほとんどの有害事象(倦怠感、ニューロパチー、脱毛)はliposomal daunorubicinのグループで有意に少なかったが、生存率や好中球減少の発生率には有意差は無かった(Gill)。

 ある無作為化された臨床試験では241人のカポジ肉腫の初回療法としてliposomal doxorubicinとBVが比較された。どちらの治療も3週間毎に6サイクル経静脈的に投与された。G-CSFは投与されなかった。Liposomal doxorubicinグループの59%とBVグループの23%に効果があったと報告された。薬剤による骨髄抑制はliposomal doxorubicinによる治療を行った患者により多くみられた(76%と52%)が、神経毒性はBV治療を行った患者により多くみられた(Stewart)。

 別のトライアルではliposomal doxorubicin(n=133)とABV(n=125)がそれぞれ2週間毎に6サイクル投与された。Liposomal doxorubicinのほうでは60人の患者に部分的に有効であり、1人に著効が得られたのに対して、ABVのほうでは31人に部分的に有効であった。Liposomal doxorubicinのほうが有害事象は有意に少なかった(Northfelt)。

 

2-7. 他の化学療法剤

 パクリタキセル(タキソール)は進行したカポジ肉腫の治療として認められている。FDAは2つの研究のデータに基づいて推奨している。

 85人の進行性カポジ肉腫の患者が参加した複合研究が行われ、85人中59人が優先的に全身治療を受けた。全体の奏効率は63%であり進行した期間の中央値は6.5ヶ月であった。全体の生存期間は13.7ヶ月であった。初めの研究では、進行したカポジ肉腫の患者の29人に、パクリタキセルが3週毎に 135mg/m2を3時間以上かけて投与された。28人の患者のうち20人に有効であった(Welles)。次の研究では50人の進行したカポジ肉腫の患者にパクリタキセルが2週毎100mg/m2を3時間以上かけて投与された。50人中30人に効果がみられ、残りの患者は変化を認めなかった (Gill)。

 初めの研究の全ての患者と次の研究の62%の患者にグレード3か4の好中球減少が生じた。しかし、はじめの研究では、投薬量減少後に好中球減少が再発した場合のみにG-CSFが投与されたが、次の研究では必要となる度に投与された。発熱を伴う好中球減少は高用量グループの55%と低用量グループの9%に生じた。両方の研究で以下の副反応が報告された。脱毛(91%)、倦怠感(84%)、嘔気及び嘔吐(69%)、下痢(79%)、関節痛もしくは筋肉痛 (64%)、末梢ニューロパチー(58%)、粘膜炎(28%)、AST値の変動(49%)、腎毒性(24%)である。7人の患者(8%)は薬剤に関連すると考えられる有害事象のため、投薬が中止された。

 ある研究で、優先的に全身治療を受けていない(INF-αは別として)進行したカポジ肉腫の患者25人に対して、1日2回25mg/m2のエトポシドが連続して隔週7日間経口投与された。全体の奏効率は32%であり、進行せず生存した期間の中央値は8週であった。5人の患者は不変であり、12人の患者は反応しなかった。最もよくみられた副反応は軽度から中等度の嘔気、嘔吐であり、約半数の症例でみられた。8例でグレード3から4の好中球減少がみられ、5例で血小板減少がみられた(Schwartsmann)。別の研究では、優先的に化学療法を受けた患者に、同じような量とスケジュールでエトポシドが経口投与され、36人中13人に反応がみられた(Evans)。

 vincaアルカロイドであるVinorelbineは最初の化学療法後に再発した播種性カポジ肉腫の患者で評価された。35人の患者のうち全体の奏効率は43%であった(3人は著効し、12人が有効であった)。最初の用量制限的毒性は骨髄抑制であり、治療継続が不可能とはならなかった(Nasti)。

 

2-8. 血管新生抑制因子

 TNP-470は血管新生を抑制するfumagillinアナログである。ACTG215のなかでTNP-470(10-70mg/mm2)が39人に毎週1時間かけて24週まで投与された。38人の患者のうち7人は有効であった。効果がでるまでの時間の中央値は4週であり、効果を示していた期間の中央値は11週だった。有害事象は好中球減少、網膜出血、頭蓋内出血がみられた。(Dezube 1998)

 サリドマイドは血管新生を抑制したり血管内皮成長因子(VEGF)や基底繊維芽細胞成長因子(BFGF)に起因するtumor necrosis factorを抑制するためカポジ肉腫の退縮を引き起こす。カポジ肉腫に対しての最適量は不明であり、3つの研究では忍容性に関して異なった結果を示している。連日100mgを投与した研究では、17人のカポジ肉腫の患者のうち6人がサリドマイドの副反応のため治療を中断した(Fife)。別の研究では、 1日1000mgを上限とし連日投与を行い忍容できるまで増量していったところ、効果を示したのは500mgの時点が中央値であった(Little 2000a)。3つめの研究では、600mgを連日投与すると3人の患者のうち2人に用量制限的な鎮静が引き起こされたが、200mgから400mgでは忍容性に優れていた(Politi)。これら3つの研究では50人のカポジ肉腫の患者がサリドマイドにより治療され、17人のカポジ肉腫が退縮した。

 インターロイキン12(IL-12)はHIV特異的なT細胞を介した免疫反応を増強する可能性があり、活性化したT細胞、cytotoxic T細胞、ナチュラルキラー細胞の増殖と活性を増強することが示されてきた。内臓カポジ肉腫と日和見感染が無くHAART中の29人の患者にIL-12が増量しながら投与された。300ng/kgかそれ以上の量を投与された20人の患者では、11人が有効を維持した。副作用には好中球減少、肝酵素の上昇、溶血性貧血、紅斑、注射部位の反応、インフルエンザ様症状があった(Little 2000b)。

 IM862は血管新生を抑制するジペプチドであるが、内臓病変のないAIDS関連性カポジ肉腫の患者に点鼻により投与された。予備研究では、42人の患者が5mgのIM862を隔日投与か5日休薬後5日投与の方法で治療された。全体の奏効率は36%であった。効果は中央値として33週続いた。副反応は軽度で一過性の頭痛、倦怠感、耳鳴り、嘔気があった(Tulpule)。しかし、IM862の多施設phaseV試験では、プラセボとIM862を投与された患者の間で奏効率に差はみられなかった。それどころか、IM862が進行を速めることも示唆された(Noy)。

 COL-3は基底膜の破壊に必要な酵素であるマトリックスのメタロプロテアーゼを抑制する合成テトラサイクリンである。基底膜の破壊は血管新生や腫瘍の転移に必要である。18人の患者によるphaseT研究ではCOL-3の経口投与が8人の患者にカポジ肉腫の退縮をもたらし、効果の続く期間の中央値は25 週であった。最もよくみられた副反応は光過敏性であった(Cianfrocca)。

 また、ある種のプロテアーゼインヒビターが血管新生を阻害することが示唆されている。研究者達はindinavirやnelfinavir、ritonavir、saquinavirが腫瘍の成長、浸潤、転移に必要な経路を阻害することを見い出した(Sgadari)。

 

2-9. レチノイド全身投与

 60人のカポジ肉腫の患者に9-cis-レチノイン酸(1日60-140mg/m2、ほとんどの患者は最高で100mg/m2)が経口投与された。全体の奏効率は37%であり、35%は変化なかった。奏効するまでの中央値は9週であった。もっともよくみられた副反応は頭痛(30%)、高脂血症(28%)、皮膚や爪床の変化(15%)であった。28人の患者が副反応のため中止された(Miles)。別の研究では57人のボランティアに同じ量とスケジュールで投与され、100mg/ m2が忍容できるもっとも高い量であった。全体的な奏効率は19%であり、同様の副反応が報告された。

 All trans レチノイン酸(45mg/m2/dayを経口で12週)のopen label研究が、先行治療なく病変が皮膚カポジ肉腫に限定しCD4が200cells/mm3以上の患者20人を対象に行われた。最初の2ヶ月間はほとんど効果がなかったが、90日の時点で19人の患者のうち8人に効果がみられた。7人の患者は変化を認めず、20人の患者のうち4人は進行した。12週の時点で有効が得られたすべての患者でAll trans レチノイン酸がもう4ヶ月継続され、6人の患者でさらなる改善が得られた。副反応は、軽度の口唇炎(炎症、ひびわれ:95%)、一過性頭痛(60%)、高トリグリセリド血症(60%)、皮膚変化であった(Saiag)。

 経静脈的なAll trans レチノイン酸の投与を行ったphaseU研究では、ほとんどよい結果は得られなかった。76人の患者が投与(60-120mg/m2週1回か3回)を受け、1人の患者に部分的に効果があった。週3回投与は週1回投与よりも効果的であり、毒性に有意差はないと考えられた(Bernstein)。

 レチノイドXレセプター(RXR)選択的結合物質であるbexaroteneが49人のカポジ肉腫の患者に経口投与された。およそ40%の患者が不完全な効果であったか、全身治療を受けている間に病変の再発があった。33%の患者は少なくとも部分的には効果があった。33週後、1人のみに著効が得られたと報告された。高脂血症、頭痛、好中球減少、紅斑が25%以上の患者にみられた(Millikan)。

 

2-10. ヒト絨毛膜ゴナドトロピン

 ヒト絨毛膜ゴナドトロピン(HCG)や妊娠早期尿から抽出されたHCG製剤の中に見い出される関連因子は、in vitroではカポジ肉腫細胞の成長を抑制する。HCG製剤を病変内に投与した臨床試験では、腫瘍の退縮がみられたが、高濃度に精製したHCGはin vitroで不活性化しており、ともに精製された分子もしくは分解されたHCGが抗腫瘍活性をもたらすと示唆された(Gill)。

 

2-11. 抗HHV-8療法

 HAARTは障害された免疫反応を再構築することによってカポジ肉腫を抑制する。これはHHV-8をよりコントロールできる可能性につながる。HHV-8 に対して特異的な活性をもつ抗ヘルペス薬もカポジ肉腫の治療や予防に対して考慮される。しかし、コントロールされた研究は無い。In vitroではcidofovir、foscarnet、ganciclovirによりHHV-8が抑制されたと報告された(Kedes 1997;Medveczky)。しかし、HHV-8がカポジ肉腫の病変に潜伏しているため、活性化した細胞傷害性ウイルスの複製を妨げる抗ヘルペス薬の使用はあまり行われない。HIV患者の大規模コホート研究の後方視的分析がいくつか行われ、抗HHV-8薬がカポジ肉腫の進行するリスクを抑えるかどうかが検討された。これらの研究の結果は一致しなかった。ある研究ではfoscarnetまたはganciclovirを投与された患者のカポジ肉腫のリスクは減少したが、別の研究ではfoscarnetでは減少したがganciclovirでは減少しなかったと報告された。3番めの研究では経口 ganciclovir維持療法を受けたCMV網膜炎のHIV陽性患者では、眼内にganciclovirのインプラントを受けただけの患者と比較して、カポジ肉腫の進行が統計学的に同程度減少した。4番めの研究ではfoscarnetもしくはgabciclovirとカポジ肉腫の進行リスクの減少との間に相関は見出せなかった(glesby;Jonen;Martin;Mocroft)。

 Cidofovirが投与された患者では病変が退縮し、中止すると進行したという報告がある。Cidofovirの病変内注射を週1回5週間施行後、臨床的、組織学的、免疫組織学的、ウイルス学的変化を認めなかったという別の報告もあり、これは、1度カポジ肉腫病変が発生すると、HHV-8の複製を活発に行うことは病気の進行や存続にもはや必要ではないということを示唆している(Claudio)。ある研究では、7人の患者がcidofovirを週1回2 週間投与後隔週投与された。中央値8.1週の時点で、全員のカポジ肉腫が進行した(Little 2003)。

 

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