● 血友病治療薬の進歩と家庭療法は、血友病患者と家族の生活に大きな変化をもたらしました。しかし未解決の深刻な問題がまだ多く残されています。例えば、止血管理に苦労するインヒビターの問題、整形外科的な合併症、HIV感染症やC型慢性肝炎の問題、社会的問題、心理的問題などです。
● 最近では、重症血友病に対する小児期から行う定期補充療法の関節障害進展予防の有効性、インヒビター症例に対するバイパス療法、免疫寛容療法の確立が大きな話題になっています。
● 血友病の医療は、居住地近くで日常的な出血エピソードの治療をする医療機関と、専門的な医療機関とが協力して行われるのが望ましいでしょう。医療機関相互の協力体制が不十分であると、患者は様々な不便や不利益を強いられることになります
● 私たちは血友病の包括的医療体制の確立を目指す必要があり、『血友病包括医療センター』の設立が望ましいと考えます。アメリカには現在144のセンターがあり,センターで治療を受けている患者と、それ以外の施設で治療を受けている患者について、死亡率と出血や関節症など血友病関連の出来事での入院率を比較したところ、前者の死亡率は後者と比べて67%少なく、出血などによる入院率も40%少ないことがわかりました。
● 『血友病包括医療センター』など専門的な医療機関の役割は、
1) 血友病に関する詳細な検査ができること
2) 長期にわたる身体的・心理的・社会的状態の評価ができること
3) 手術などの観血的治療ができること
4) 血友病に関する教育や指導ができること
5) 遺伝相談に応じることができること、などです。
● 医療体制には地域差や医療機関の格差がありますが、これらの役割を担うことのできる専門施設が整備されることを願います。
● 本マニュアルは、2002年度厚生労働省「エイズ治療のための地方ブロック拠点病院と拠点病院に関する研究班」の事業として作成されたものを、訂正・内容追加したものです。対象は、これから血友病を学ぶ医師(研修医)や医療従事者を対象としていますが、患者・家族の方にもある程度理解できる内容にしました。
本マニュアルの内容について、色々な方のご経験やご意見を頂いて適宜改訂しながら、よりよい血友病診療のノウハウを蓄積して行きたいと思います。