6-1.凝固因子製剤とは
6-1-1.ヒト血漿由来製剤
● 輸入製剤を除き、日本赤十字血液センターの献血血漿が原料となっています。
● 現在は病原体のスクリーニング検査及び遺伝子検査、微小孔フィルター、モノクローナル抗体純化、親和性カラム、化学(SD)処理、加熱処理、紫外線照射、製品のPCR法によるウイルス検査などを組み合わせており、未知のウイルスもかなり排除できると期待され、安全性は非常に高いと言えます。一般の赤血球や血小板の輸血よりは安全と思われます。
● しかしヒトの血漿が原料である限り、検出できない感染性因子、未知の感染性因子(未知のウイルス、プリオン等)を100%完全に除去することは不可能です。
● ヒトの血漿は有限です。このため原料確保に非常に多くの人の努力や協力が必要です。特定の採血業者(日本は赤十字血液センターのみ)の能力を越えるので各国政府は様々な関与をしています。
6-1-2.遺伝子組み替え型(リコンビナント)製剤
● 日本では1992年より遺伝子組み替え型(リコンビナント)第[因子製剤が市販されています。現時点では、臨床効果と安全性は血漿由来製剤と比較して変わらないと言えます。厳密にはこれまでの製剤には安定化剤としてヒトアルブミンが添加されていたり、工程中に異種蛋白が含まれ100%人工のものではありませんでした。
● 2001年12月にヒトアルブミンが添加されていないリコンビナント製剤(バイエル社:コージネイトFS)が認可されました。2007年2月現在、製剤化工程のいずれにおいてもヒトおよび動物由来タンパクを添加しないプラズマ/アルブミンフリー製剤のリコンビナント製剤(バクスター社:アドベイト)も認可されています。
● 第\因子リコンビナント製剤は欧米では市販されていますが日本では現在承認申請中です。
●リコンビナント製剤の問題点は、医学以外の事柄もあります。つまり日本製のリコンビナント製剤はなく,海外の製薬会社にその供給を頼っている点です。そのため製薬会社の製造工程のトラブルが製剤不足の危機をもたらし,日本に輸入されない,といった危険性があります。

6-2.出血の治療のための凝固因子製剤
6-2-1.製剤の種類【表6-1】
1) 高度濃縮加熱第VIII因子製剤
フォン・ヴィレブランド因子(vWF)を多く含んでいるため、一般にフォン・ヴィレブランド病(vWD)の治療に頻用されている。

a.

コンファクトF (化血研/藤沢)

b.

コンコエイトHT (三菱ウェルファーマ)
2) モノクローナル抗体純化第VIII因子製剤
クロスエイトM (日本赤十字社)
3) 遺伝子組み替え第VIII因子製剤

a.

コージネイトFS (バイエル)

b.

アドベイト(以前はリコネイト) (バクスター)
4) モノクローナル抗体純化第IX因子製剤

a.

ノバクトM  (化血研/アステラス)

b.

クリスマシンM (三菱ウェルファーマ/ベネシス)
5) 活性化血液凝固因子抗体迂回複合体(プロトロンビン複合体)製剤(APCC)

a.

ファイバ (バクスター)
6) 遺伝子組み替え活性型第Z因子製剤(インヒビター用製剤)
ノボセブン (ノボ・ノルディスク)
6-2-2.製剤の選択
● HBV、HCV、HIV、パルボウイルスB19抗体陰性のPUP(previously untreated patient:初めて使用の患者)では、リコンビナント製剤の使用を考慮します。
●モノクローナル抗体純化製剤の安全性・有効性も同等で、患者さんに選択して頂きます。
● コンファクトFはフォン・ヴィレブランド病(vWD)と血友病Aに用います。また軽症血友病Aと一部のvWDではデスモプレシンの使用も考慮します。
● インヒビター患者の治療の場合、一般にファイバ、ノボセブンなどの製剤を使用しますが,その時のインヒビターの値や,インヒビターのタイプによっては,大量の凝固因子製剤を用いる中和療法を選択します(詳細は第11章)。
6-2-3.現在申請中あるいは海外では既に発売されている製剤
● リコンビナント第IX因子製剤(商品名:ベネフィックス)
● B-ドメイン欠損リコンビナント第VIII因子製剤(商品名:リファクト)
● ブタ第VIII因子製剤(第VIII因子インヒビター用)(商品名:ハイエイトC)
6-2-4.新たな製剤の開発
● ペグ化凝固因子製剤:現在ペグインターフェロンの認可により慢性C型肝炎患者で以前は週3回注射しなければいけなかった治療が、週1回で済むようになりました。この製剤をペグ化するという技術を血友病の製剤にも応用する目的で、ジリップファーマ社は第[因子にポリエチレングリコールをくっつける技術を研究し、半減期が長く、長時間作用型の製剤の開発に成功しました。現在製品化にむけて進んでいます。

6-3.凝固因子製剤の扱い方
6-3-1.保存法
● 凍結乾燥してあるので冷暗所(10℃以下、冷蔵庫)に保管します。
● 実際はかなり安定です。持ち帰りの際にクーラーボックスなどは不要ですが、夏には高温となる車内放置は厳禁です。
● 溶解用の蒸留水を冷やす必要はありません。
● アドベイドは安定試験の結果、3ヶ月まで室温保存(25℃まで)が可能です。
6-3-2.溶解法
● 製剤の溶解法は製品により若干違いますが、添付の説明書を読めば簡単です。
●ファイバは溶解用の蒸留水が冷たいと解けにくいことがあるので、少し暖めておきます。また溶解の際には緩やかに回転させながら泡を作らないように溶解します。
● どうしても溶けない不純物があれば使用せず、他のバイアルを使用します。そしてその旨をカルテまたは患者手帳に記載し廃棄の手続きをとります。詳細については薬局あるいはメーカーに連絡して下さい。
6-3-3.使用法
● ファイバ以外の製剤は添付説明書にある通り輸注速度は 5 ml/min 以下が原則ですが、現在の製剤はこれを超えるスピードで輸注しても副作用はほとんどありません。
● ファイバ以外の製剤は添付説明書にある通り注入速度は 5 ml/分 以下が原則ですが、現在の製剤はこれを超えるスピードで投与しても副作用はほとんどありません。
● ファイバの注入速度は,1kg体重あたり2単位/分以下と、添付説明書には書かれています。それを越えるスピードで注射しても副作用はほとんどありませんが、軽度の頭痛を起こすことがあります。
6-3-4.ロット番号の記録と有効期限
● 1997年9月から全ての血液製剤にロット番号管理が義務づけられました。
● 瓶や箱に記してある製剤のロット番号や有効期限についても確認して使用し、輸注したらカルテまたは患者手帳に輸注日時、輸注者、ロット番号を必ず記載します。ロット番号は瓶や箱に貼付してあるシールを貼れば、書き間違いを防ぐことができます。
● 製剤の使用の記録は,法律により医療機関は20年保管が義務づけられています。
●一旦家庭療法用に処方した製剤は、保存条件が保証できないので交換することはできません。
● 患者同士の製剤の貸し借りも緊急時を除いて、できるだけ避けたいものです。