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12-1.血友病性関節症 |
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12-1-1. 肩関節
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12-1-1-1. 正常な肩関節
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肩関節はひとつの関節ではなく、4つの関節がお互いに関連し合い肩関節を作っています。関節を作る主な骨は肩峰(けんぽう)や臼蓋窩(きゅうがいか)を含む肩甲骨や、上腕骨、鎖骨などです。その中で一般に肩関節と言えば、上腕骨の骨頭と肩甲骨の臼蓋窩で作る肩甲上腕関節のことを示します【図12-1】。
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肩関節を取り巻く組織は、主に関節包(かんせつほう)、その外側を取り囲む腱板(けんばん)や靭帯、そしてさらにその外側を取り囲む筋肉で作られています。その役割は機能的にとても重要です。広い運動範囲を支え、過剰な運動を抑制し、関節を安定させるなどの働きがあります【図12-2】。
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図12-2

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12-1-1-2.
肩関節の症状
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肩関節の中に出血が最初に起こる時期は遅く、一般的に平均16〜18歳です。出血のきっかけは何らかの外傷であることが多く、また起こりやすいのは利き手側です。肩関節に痛みが出てくることは血友病ではさほど多くはありません。そして関節が著しく変形することも多くありません。その上関節が著しく変形していてもある程度動きのある場合に強い痛みを訴えることはありません。動きのは特に手を上げる動作が難しくなります。
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| ● |
しかし肩関節においては他の関節症の痛みとは違った強い痛みを訴えそのため強力な痛み止めが必要になる場合があります。肘を抱える体勢から動かすことを嫌い、肩を動かせる範囲は狭く動かし方も滑らかではないため、より肩関節に負担をかけるようになり痛みは強くなっていきます。
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12-1-1-3. 肩の関節症
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関節症は約20%の血友病患者さんに見られます。関節変化としては関節面のでこぼこ(不整)や骨内の嚢胞(のうほう)【図12-3?6】と関節周囲に骨棘(こつきょく)を形成したり、臼蓋窩の関節面の延長や上腕骨骨頭との間の隙間(関節裂隙:かんせつれつげき)が狭くなることが見られます【図12-4】。関節症が進むと骨頭が変形し、なくなってしまうこともあります。
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12-1-1-4. 肩関節症の治療
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[理学療法]
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関節の変形の治療よりは、関節の動きを維持することが重要となります。肩は、関節だけでなく肩甲骨の動きも大事です。肩の動きの悪い方はこの肩甲骨の動きも悪くなっていることが多いようです。逆に肩関節の変形が著しく、理学療法で動きが良くなるとは期待できない場合でも、肩甲骨の動きを改善する目的で理学療法を行えば、多少の動きの改善が得られる可能性があります。
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肩の関節の動きを維持することは、他の関節においても同様ですが悪くなってから良くしようとするのではなく、日頃から関節を動かして改善ではなく現状維持に努めることが第一です。その方法としては肩関節の場合、背伸びをするときのように、手を組んで空に突き上げるような運動を一日に一回でもしておくことが大切です。これはベッドで寝転がっていても同様のポーズを取っていただければよいと思います。
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[手術療法]
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手術治療として、関節の引っ掛かりをなくすために骨棘をとる手術などがあります。肩の人工関節もありますが治療経験がなく、また一般的に人工関節が選択されていないようです。しかし関節の状態によっては治療効果が期待できる方法だと思います。
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12-1-2.肘関節 |
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12-1-2-1. 正常な肘関節のしくみ【図12-7?9】 |
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肘は上腕骨(じょうわんこつ)と前腕の2本の骨で作られています。 |
図12-7
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前腕の2本の骨はそれぞれ橈骨(とうこつ:親指側の骨、外側)と尺骨(しゃっこつ:小指側の骨、内側)と呼ばれています【図1】。 |
| ● |
この内側に尺骨神経が走っています。肘をついたときに小指に電気が走ったような痛みを経験したことがあると思います。それはこの神経を刺激したからです。 |
図12-8
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| ● | これら3つの骨がそれぞれ関節をつくり、肘の曲げ伸ばし(屈曲・伸展:くっきょく・しんてん)ができます。 |
| ● | また肘の動きにはドアノブを回したりするような手を回す運動が行えます。これを回外・回内(かいがい・かいない)と言います。手のひらが見えるようにまわすことを回外、手の甲が見えるようにまわすことを回内と言います。
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| ● |
上腕から前腕にかけての肘の角度はすこし外反(がいはん)しています。外反とは脇を占めて肘を体につけたときに前腕から手が外に向く状態を言います。 |
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12-1-2-2. 肘関節の症状 |
| ● | 血友病では小さい頃から肘関節周囲や関節内に出血を起こします。そして多くの患者さんはこの関節に変形を起こしています。 |
図12-9
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| ● |
症状としては肘の曲げ伸ばしができなくなり、手のひらが顔のほうに向かなくなります。すると肘を曲げるのに親指が肩に向かうように肘を曲げるようになります。 |
| ● |
また前腕から手が強く外側に向くようになります(外反変形)。この変形が起っていると、小指と薬指のしびれが出てくることがあります(遅発性尺骨神経麻痺:ちはつせいしゃっこつしんけいまひ)【図12-10】。 |
図12-10
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12-1-2-3. 肘関節の関節症 |
| ● |
一般的な関節の隙間が狭くなったり、骨嚢包(こつのうほう)、骨棘(こつきょく)ができたりする他に肘関節としての特徴的な変形が起こります。【図12-11】。 |
図12-11
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| ● |
尺骨では肘頭がとりのくちばしのように伸びてきます。そして橈骨では橈骨頭がつぶれ、前方に脱臼してきます。【図12-12】 |
| ● |
また上腕骨では肘頭窩が大きくなり、上腕骨が溶けて脆弱になり骨折の危険が出てくる場合もあります。【図12-13】> |
| ● |
関節症がすすみ、そして関節内の出血も続いていると、骨が吸収されてしまします。そして関節が緩くなり、動きが良くなってくることもあります。これはもちろん悪くなったということです。 |
| 図12-12 | 図12-13 |
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12-1-2-4. 肘関節症の治療 |
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[理学療法] |
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成人の変形が形成されてしまっている場合、肘の動きを理学療法で改善させるのはとても困難です。改善というよりは現状維持に努めることになります。積極的な理学療法というよりは軽い肘の運動を心がけてください。 |
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[手術療法] |
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出血を繰り返す場合には、もちろん凝固因子製剤を使って止血をすることが基本ですが、出血の原因と考えられる肘関節周囲の滑膜をとる手術も行われています。 |
| ● |
関節の変形については動きが悪い場合には、肘関節の骨を削ったりすることもあります。また人工関節による関節の形成も行われています。 |
| ● |
関節の問題だけでなく、尺骨神経の麻痺も大きな問題になります。神経の状態を確かめる検査を行い、ひどく障害されて痺れがとれない場合には手術が必要になってきます。放置すると握力が落ちてくることがあります。 |
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12-1-3. 手関節 |
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12-1-3-1. 正常な手関節のしくみ |
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手関節は橈骨(とうこつ)、尺骨(しゃっこつ)そして手根骨で作られています。【図12-14】 |
図12-14
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| ● |
関節の動きとしては、手の甲方向へ曲げることを背屈(はいくつ)、手のひら側に曲げることを掌屈(しょうくつ)と言います。 |
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12-1-3-2. 手関節の症状 |
図12-15

図12-16
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● |
血友病で手関節に出血を起こすことはほとんどありません。動きが悪いことも少なく、ほとんど血友病性関節症症状のない関節だと言えます。 |
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12-1-3-3. 正常な手関節のしくみ |
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もっとも多く見られるのは、骨の密度が薄くなっている変化です。これは手関節に出血したことを示す場合もありますが、多くは肘や肩の影響で手を使わなかった場合です。【図12-15】 |
| ● |
稀に関節の隙間が狭くなっている場合があります。出血の記憶のない方でも見られる場合があり、一度は確認しておく必要はあるようです。【図12-16】 |
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12-1-3-4. 手関節の関節症の治療
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特に手術や理学療法は必要ない関節です。骨の密度が低い場合でも、体全体として骨密度が低い状態(骨粗鬆症:こつそしょうしょう)でなければ、内服治療も必要ありません。
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12-1-4. 股関節 |
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12-1-4-1.正常な股関節 |
図12-17

図12-18

図12-19

図12-20

図12-21

図12-22

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股関節は骨盤の臼蓋(きゅうがい)という部分と大腿骨の骨頭(こっとう)という部分から作られています。 |
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臼蓋は大腿骨骨頭の上部を広く被っています。大腿骨は骨頭と頚部そして骨幹部に分けられ、頚部の傾きを外反角と言います。【図12-17】 |
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このように丸い頭を持った関節の動きの方向は多く、6つの方向に動きます。 |
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まず膝をおなかに抱える方向(屈曲:くっきょく)、逆に反る方向(伸展:しんてん)、脚を広げる方向(外転:がいてん)、脚を閉じる方向(内転:ないてん)、太ももを内側に回す方向(内旋:ないせん)そして太ももを外側に回す方向(外旋:がいせん)です。 |
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たとえばあぐらをかいている時には、股関節は屈曲・外転・外旋していることになります。 |
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12-1-4-2.股関節の症状 |
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股関節は他の下肢関節である膝や足関節と比べて出血を起こすことは少なく、関節の変形を起こしている人も少ない関節です。 |
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その股関節の出血は年長になってからの場合が多いようです。股関節は皮膚から深いところに関節があるため、出血による腫れや内出血の痣がわかりにくく、筋肉内出血と関節内出血の区別は簡単ではありません。 |
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とくに腸腰筋(ちょうようきん)の筋肉内出血の場合も腰から股関節にかけての痛みを感じるために症状だけでは区別は難しく、レントゲン検査が必要となります。 |
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ただし筋肉内出血であっても関節内出血であっても止血という治療の基本にかわりはありませんから、まず止血を行ってから必要に応じて検査を行うことになります。 |
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股関節では、一回の大きい関節内出血で関節破壊が起こってしまうと言う場合もあり、たとえ関節内出血が一回目であっても注意する必要がある関節です。 |
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● |
また腰から太ももにかけては、筋肉内出血が慢性化し血腫(けっしゅ)や偽腫瘍(ぎしゅよう)が起こりやすい場所でもあり注意が必要です。 |
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また股関節の著しい変形は左右の脚の長さに差が出てくることが多く、歩く姿が悪くなり腰痛を伴う場合もあります。 |
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12-1-4-3.股関節の関節症 |
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関節の形態として特徴的なことは、大腿骨の外反角が大きくなることです。【図12-18】 |
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つまり骨頭から骨幹部までまっすぐになってしまうことです。この変化は小児期に歩行など股関節に荷重がかからなかったことや、脚を使わなかったことを示しています。したがって股関節に出血があった場合にも見られますが、主に同側の膝や足関節に出血や痛みがあって歩けなかった時期があった場合に見られます。 |
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股関節に特徴的な変化として骨が大腿骨骨頭をおおうように増えてしまい、関節の動きが悪く日常生活が難しくなることもあります。【図12-19】 |
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もちろん血友病性関節症としての関節の隙間がなくなることや、その他骨棘(こつきょく)や骨のう包(こつのうほう)そして骨量の低下し骨頭の圧壊も見られます【図12-20〜 22】。 |
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12-1-4-4.股関節症の治療
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[理学療法]
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股関節の場合、関節が動かなくなることが多くなります。多くの方は特に伸びない、開かないという状態になります。こうなると日常生活が難しくなるためにこの方向の動きを確保することが、股関節に障害を持つ方の場合重要となってきます。股を広げ後ろに反るような動きを一日の動きの中に意識して取り入れてください。
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また大腿骨の圧壊などで足の長さに違いがでてくることが多く、腰痛の原因となります。足の長さをあわせる補装具の使用も必要でしょう。
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[手術療法]
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血友病性関節症では成人では著しく変関節の隙間が狭くなり股関節痛や腰痛がある場合には人工関節置換術が一般的です。しかし手術を行う年齢が若いこともあって人工関節の耐久年数が問題となるため、いわゆる青年〜壮年期の変形性股関節症では、股関節周囲の骨切り術や関節固定術が選択されることが多いようです。股関節の固定術は他の関節に負担が増えることになり、多くの関節に変形を持つ血友病の方には選択しにくい方法です。しかし股関節周囲の骨切り術は、現在のところ経験はありませんが今後患者さんの状態に合わせて治療方法として選択される方法でしょう。
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12-1-5.膝関節 |
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12-1-5-1.正常な膝関節 |
図12-23

図12-24

図12-25

図12-26

図12-27

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膝関節は大腿骨(だいたいこつ)、脛骨(けいこつ)、腓骨(ひこつ)そして膝蓋骨(しつがいこつ)の4つの骨からできています。
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動きは曲げ伸ばしの2種類です。大腿骨の端は2つの大きな膨らんだ骨で下腿の内側にある太い脛骨と体重を支える関節を作っており、その外側に腓骨があります【図12-23】。
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この関節は脛骨の中央をさかいに内側の関節と外側の関節にわけられ、O脚(内反変形)では内側の関節に、X脚(外反変形)では外側の関節に負担が大きくなり変形していきます。
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膝関節にはもう一つ大事な関節があります。それは膝蓋骨と大腿骨の間の関節です。この関節は体重を支える関節ではありませんが、この関節に変形が起こると膝の曲げ伸ばしで痛みが出たり、動きが悪くなります。
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関節の状態を観察するために他の関節は正面【図12-23】からと横【図12-24】からの2つの方向からレントゲンを撮りますが、この関節を観察するために膝ではもう一枚レントゲンを撮ることが一般的です【図12-25】。
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12-1-5-2.膝関節の症状 |
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成人で重症の血友病患者で問題となる関節としては、この膝関節が一番でしょう。小さい頃から関節に出血、腫れや熱感を繰り返し徐々に関節の動きが悪くなり、最終的に歩けなくなることもあります。
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膝は骨が近いため関節の腫れがわかりやすく、繰り返す出血による炎症のため滑膜が増えた状態がわかりやすいところです。出血を繰り返している膝では膝蓋骨の上に腫れが見られ、多くの場合関節内に出た血液が溜まっています。また慢性化した場合では、膝蓋骨の下がもっともわかりやすく、ここがブヨブヨと柔らかく膨らんでいれば、滑膜が増えていると思われます。
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膝関節の動きが悪い場合、大きく2つのことが考えられます。ひとつは骨が変形して関節が動かせなくなっている状態、もうひとつは骨の変形は軽いにもかかわらず動かない状態です。
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変形がひどい場合には外科的な処置が必要とりますが、変形がない場合には理学療法を気長に行うことで改善することがあります。変形がないのに動かない原因として安静をとり過ぎて周囲の筋肉や腱などが硬くなり動かなくなってしまうからです。
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12-1-5-3.膝の関節症 |
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骨の変形としては、もっとも特徴的なものは山形に関節が変形することです【図12-26】。脛骨の中央部から内・外側に向かって関節面が下がっていく変形です。これはいわゆる変形性関節症や関節リウマチの膝の変形では見られないものです。また膝蓋骨の脱臼傾向が見られたり【図12-27】、骨の成長が未熟で成人男性の膝として細く小さい場合も見られます【図12-28,29】。その他の関節でも見られるような巨大なのう胞【図12-30】や関節面に多数の小さいのう胞と関節破壊が見られます【図12-31】。
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12-1-5-4.膝関節症の治療 |
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[理学療法]
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図12-31
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低い椅子に腰掛けたり、低いいすから立ち上がったりするためには十分膝が曲がる必要があります。しかし比較的歩きやすい状態を維持するためには、膝が伸びることが重要になってきます。出血が続いている場合でも伸ばすことを意識することは関節の変形が起こっても歩行能力の維持につながります。
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また症状のところでもふれましたが、変形がなくとも動きが悪い場合では理学療法を行うことで膝の動きはとてもよくなる可能性がありますから、レントゲンで関節の状態を確認した上で目標をもって理学療法を行うことも必要でしょう。
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[手術療法]
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出血が続く場合には滑膜切除術が行われます。詳細は滑膜切除術のところで説明をさせていただきますが、関節の変形を遅らせる効果が期待されています。出血がなく変形も軽度から中等度である場合には、関節内に潤滑油として期待される薬剤を注入する方法もあります。
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この方法は1〜2週ごとに外来で行う治療方法で、適切な止血管理が行える状況であれば簡便な治療方法と言えるでしょう。またO脚に関しては外科的に脛骨で矯正を行う方法もあります。この矯正により膝関節で偏っていた体重負荷を分散させ痛みを軽減することを期待しています。変形や疼痛が著しい場合には人工関節が適応となります。
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12-1-6.足関節・趾 |
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12-1-6-1.正常な足・趾関節 |
図12-32

図12-33

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足関節は下腿の脛骨(けいこつ)と腓骨(ひこつ)そして距骨(きょこつ)の3つの関節からできています。脛骨の一部が内くるぶしとなり、腓骨の端が外くるぶしです。【図12-32】
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足関節は凹レンズのような脛骨と凸レンズのような距骨の間【図12-33】で主に体重を支え、また滑らかに動くことで、足首をおこしたり、踏み込んだりできます。そのほか足関節の動きは内がえしたり、外がえしたりなど複雑です。
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第1足趾は3つの骨から、また第2足趾から第5足趾まではそれぞれ4つの骨でできています。そして各骨間で関節を作っています。
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12-1-6-2.足・趾関節の症状 |
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この関節も膝関節と同様に出血が起きやすく変形が起こりやすい関節です。関節の動きは特に足首を起こしにくくなり、歩いているときに踵が浮いているような歩き方になることがあります。
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関節の腫れも外観からわかりやすく、特にくるぶし周囲の腫れが目立ちます。しかしレントゲンでひどい変形が見られても痛みや日常生活への悪影響を訴えることが少ないことは、膝関節とは大きく違うところです。
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足趾の関節内出血はあまりなく、血友病性の変形はほとんどないといっていいでしょう。ただし関節外の出血が起こり、血腫を作ることがあります。特に小児期では足趾周囲はおきやすい場所なので注意が必要です。
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12-1-6-3.足・趾の関節症 |
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骨の変形は主に距骨に起こります。特徴的な変形として脛骨の前面に骨棘が伸び、距骨の凸がつぶれて最終的に関節が平坦になってしまう変形です【図12-34】。
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図12-34

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さらに、まるで体重を支える関節のように、くるぶしとその下に距骨から骨棘ができてきます【図12-35, 36】。こうなると関節の動きはありませんが、自然に関節が固定された状態のように安定するために歩行時など足関節の痛みが少なくなるのではないかと思われます。
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12-1-6-4.足・趾関節の治療 |
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[理学療法]
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図12-35

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関節障害がすすむと足関節がおこしにくくなりますので、この方向の動きを重点的に行うことが大事です。また靴やスニーカーは靴底の厚い衝撃を吸収しやすいものをつかうことで痛みがすくなくなります。足関節が起こせない場合には、踵の下に少し厚めの敷き革をいれると歩きやすくなります。
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[手術療法]
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図12-36

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血友病性関節症が起こりやすい関節であるため、いろいろな手術方法が行われています。増殖した滑膜を取り除く滑膜切除術、関節の変形を矯正するための骨切り術や骨棘切除術、人工関節、そして関節固定術などです。しかしその一方で膝関節より症状の訴えが少ないため意外と手術を希望したり、適応となることの少ない関節です。
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12-2.滑膜炎 |
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12-2-1.滑膜 |
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滑膜は関節のふくろを作るもののひとつで、最も関節側にあるものです【図12-37】。その厚さは、関節によって違いますが、2cmにもなる大きなひだです。その働きは関節を滑らかに動かすために関節液を産生し、また関節内をきれいに維持するためにいらなくなったものを関節の外へと排除しています。 |
図12-37
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関節液には含まれているヒアルロン酸は、変形性膝関節症などでは治療薬としてごく一般に外来で関節内に注入されているものです。 |
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12-2-2.滑膜炎の発生 |
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滑膜炎は繰り返す関節内出血をきっかけにして起こります。どのように進行するかは不明なところが多く、はっきり言ってわかっていません。しかし出血のなかった関節では関節症にならないことから、出血が原因であることには違いがありません。 |
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その出血は滑膜炎を起こし、滑膜炎は関節内の滑膜を増やし、より出血しやすい状態へと変化させます。この出血と滑膜の増殖が悪循環となって、関節内の出血が繰り返し起こってしまいます【図12-38】。 |
図12-38
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そして、関節に炎症が続くことによって、炎症細胞と呼ばれる細胞が関節内に侵入し、いろいろな化学物質を放出し、関節の破壊が進行すると現在考えられています。 |
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12-2-3.治療 |
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関節内出血を繰り返さないことがまず大事な治療になります。したがって凝固因子の補充や患部の安静や圧迫そして冷却を行うことになります。また繰り返し出血がおこる場合には、関節内に溜まった血液を抜いたり、関節の中を洗うような外来処置が行われます。 |
| ● |
滑膜が増殖している場合には、この滑膜を取り除くために入院治療が必要となる場合もあります。 |
| ● |
滑膜炎の治療とは直接関係ありませんが、変形した関節の痛みが続く場合にはヒアルロン酸の関節内への注入も行われています。 |
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12-3.血友病性偽腫瘍 |
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12-3-1.偽腫瘍 |
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血友病では繰り返す出血を適切に治療しないと、厚い膜(被膜:ひまく)でおおわれた血液のかたまりができることがまれにあります。 |
図12-39
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| ● |
関節症は重症の血友病患者さんで多く見られますが、この血液のかたまりは、出血時に積極的に補充療法などの止血治療を行わない中等症から軽症の方に見られることが多いようです。 |
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当初は症状のない血液のかたまりで血腫(けっしゅ)と呼んでいます。つまり血腫とは骨や血管・神経に影響がなく、特に症状のない血液のかたまりを示しています【図12-39, 40】。 |
図12-40
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| ● |
しかし徐々に大きくなり骨や神経・血管に影響を与えるようになり症状が出てきた場合や、感染が合併した場合を偽腫瘍(狭義)と呼び区別されています【図12-41, 42】。 |
| ● |
そして血腫と狭義の偽腫瘍を総称して偽腫瘍(広義)と呼んでいます。 |
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12-3-2.小児の偽腫瘍(広義) |
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子供では、最初の出血は原因がないことが一般的で、起こりやすい場所は手足などのからだの末梢です。 |
図12-41
図12-42
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特に距骨・踵骨そして中足骨といった足の骨で起こりやすく、大きさはどんどん大きくなり周囲に内出血も一緒に起こってきます。しかし補充療法を十分にすることで、完全に治療することができる場合が多く、手術による切除が必要になることはほとんどありません。 |
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12-3-3.成人の偽腫瘍(広義) |
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成人の血腫が起こりやすい場所は腰から骨盤、そして膝です。 |
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外傷の後の出血から起こり、ゆっくりと巨大化します。そして周囲の骨を壊したり、血管・神経を巻き込み神経障害や循環障害を起こしてきます。 |
| ● |
多くの血腫や偽腫瘍は補充療法などの治療では効果が乏しいために外科的に切除することが多くなります。 |
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12-3-4.治療 |
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小児はもちろん、成人であってもまず補充療法が最初の治療方法です。この保存的な方法で治療が不可能な場合、外科的な治療が行われます。完全に治療するためには被膜ごと一隗として切除することが必要となってきます。 |
| ● |
しかし大きいものや血管・神経を巻き込んでいる場合では、偽腫瘍の内容物を出来るだけ取り出し出血が起きないように、取り出した空洞に人工骨やフィブリンのりなどを入れて、偽腫瘍の進行を抑えるような手術を行います。また骨への影響が大きい場合や感染を起こしている場合には、足の切断を余儀なくされることもあります。 |
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12-4 滑膜切除術 |
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12-4-1. 効果と適応 |
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効果 |
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・ 関節内での出血を抑えること・・・・○ |
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・ 関節症の発症を抑えること・・・・・△ |
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・ 関節症の進行を抑えること・・・・・× |
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適応 |
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・ 関節症が(ほとんど)なく関節内出血が繰り返す場合・・・主に小児 |
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・ 関節症があるが関節内出血が主で痛みがひどくない・・・・小児・成人 |
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| ● |
滑膜切除で行われることは、出血の元になっている滑膜を取り除くことです。したがってこの処置以後に出血を繰り返さなければ、滑膜の増生は抑えることができます。つまり出血を繰り返している関節内部の環境を一度リセットする形になりますから、止血効果を期待することができます。一方関節の障害の進行を止めることはできないようです。 |
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関節が破壊されていく変化についてほとんどわかっていません。そのために滑膜をとることで関節障害の予防を期待して、過去にいろいろな国の施設で滑膜切除が行われましたが、現在の医療では滑膜をとることで関節症の進行を抑えることはできないと結論付けられています。 |
| ● |
滑膜切除が関節症の進行を止めることができないことから、出血は多いが関節症が起こっていない方に滑膜切除を行うことで関節症の発症も抑えられるかもしれないと考えられています。また関節症があっても出血がなければ痛みがない方で出血を繰り返す場合に関節症の進行を遅らせる方策として行なわれる場合があります。 |
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12-4-2. 2つの滑膜切除術 |
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滑膜切除術(狭義) |
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関節鏡鏡視下滑膜切除術 |
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観血的滑膜切除術 |
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滑膜浄化術(かつまくじょうかじゅつ) |
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化学的滑膜浄化術 |
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放射性滑膜浄化術 |
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滑膜切除術は手術を行って滑膜をとる方法で、具体的には関節鏡と呼ばれる関節の中をのぞく機械を使って小さい傷で行う方法と、関節を完全に露出して行う方法とがあります。 |
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滑膜浄化術には手術ではなく関節内に滑膜を浄化する薬品を入れて滑膜を取り除く方法です。薬品としては化学薬品を使う場合と放射性同位元素を使う場合があります。 |
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12-4-3.関節症視下滑膜切除術【図12-43】 |
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関節の周囲に5mmから10mmの傷を作りそこから、関節内に金属の筒を挿入し、これをガイドとして関節内にカメラを入れて関節内部を観察し、さらに別に設けた傷から滑膜を取り除く為のパンチのような道具を入れて関節の中の滑膜を取り除く方法です。小さな傷が3~4箇所に出来るだけでよく、術後に関節が動き難くなる可能性も低い方法で、主に膝関節の滑膜切除に利用されています。 |
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図12-43:関節鏡視 |
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滑膜(⇒)ときれいな関節軟骨(⇔) |

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12-4-4.観血的滑膜切除術【図12-44】 |
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関節を大きく切り開いて滑膜を切除する方法です。関節内の滑膜を直接見て切除する為にとりやすい方法ですが、傷が大きく出血が多くなり手術後に関節の動きが悪くなることもあるので、一般には利用されません。 |
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図12-44:人工膝関節手術を行った時に採取した滑膜

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12-4-5.化学的滑膜浄化術 |
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関節内に化学物質を注入する方法で、海外では外来で行われています。しかし使用する薬品は、国内では認可されていないものばかりであることや、関節や軟骨への影響も危惧されるために子供への使用には疑問が残ります。 |
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12-4-6.放射性滑膜浄化術 |
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関節内に放射性同位元素を注入する方法で海外では外来治療として行われていますが、放射性同位元素の取り扱いが日本では厳しくこの方法は行われていません。放射線の子供の染色体に与える影響が危惧されますが、影響がないとの報告が出ています。 |
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利点 |
欠点 |
評価* |
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関節鏡視下滑膜切除 |
傷が小さく出血が少ない
血液製剤の使用量が少ない |
全身麻酔が必要
入院が必要 |
○ |
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観血的滑膜切除 |
滑膜を直視下で切除できる |
傷が大きく出血が多い
関節が硬くなる可能性 |
△ |
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化学的滑膜切除 |
外来でできる
麻酔が必要ない |
薬剤を手に入れにくい
軟骨や骨への影響 |
× |
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放射性滑膜切除** |
外来でできる
麻酔が必要ない |
薬剤が手に入らない
染色体への影響を危惧 |
× |
*:日本で行なう場合の評価、 **:海外での報告を基にして |
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12-5. 人工関節置換術 |
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12-5-1. 概略【図12-45?48】 |
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人工関節置換術とは、骨・軟骨が変形したために痛みが起こっている関節に対して、人工物で置き換えて痛みを取り除き関節の機能を温存する手術です。手術の際に周囲の滑膜を切除しますから、滑膜切除を同時に行うことにもなり関節内出血に対する止血効果が期待できます。 |
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使用される人工関節の多くはチタン合金による金属部分と超高分子ポリエチレンと呼ばれるプラスティック部分からでできています。関節の機能(動く関節)を保つためには、十分なリハビリが必要です。 |
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人工関節は一般には既製品で、そのサイズが決まっているために極端に小さいあるいは細い骨では手術が難しくなります。また人工関節を入れるための骨がなくなってしまっている場合(特に血友病性偽腫瘍により)人工関節はできません。 |
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そして麻酔や術後の出血などいろいろ術後に危険なことがありますが、特に感染と再置換は重大な問題です。感染は手術直後に起こる場合や術後数年たって起こる場合があります。感染がいったん起こると抗生剤など治療を行いますが、多くの場合人工関節を取り除かないとおさまらず、関節の機能は著しく低下することになります。関節を取り除いたあと、再度人工関節を入れることも可能です。しかし人工関節を入れずに装具を利用したり、あるいは関節を固定することもあります。 |
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また人工関節を長期に使用すると、人工物と骨との間に緩みができて、その結果痛みが起こり入れ替えの手術が必要になってきます。これは人工関節を受けた場合必ず一定期間経過する(個人差はあります)と起こるものです。 |
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12-5-2. 適応 |
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・ 著しく痛んだ関節・・・・・・・・・・・・必須条件。 |
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・ 関節に出血していなくても関節痛が強い。 |
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・ 関節内出血を繰り返す。 |
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・ リハビリに対する意欲がある。 |
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12-5-3. 効果 |
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・ 痛みがとれる。 |
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・ 関節内出血が減る。 |
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・ 関節が動く。 |
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12-5-4. 禁忌 |
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・ 全身状態が著しく悪い。 |
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・ 人工関節を入れる骨がない。 |
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・ 適当な大きさの人工関節がない(骨が細い・小さい場合)。 |
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12-5-5. 最も注意すべき合併症 |
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・ 細菌感染 (約4%)。 |
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・ 人工関節の緩みと再置換(人工関節置換術後10~15年が目安)。 |
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12-5-6. 人工関節の行われている関節 |
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・ 膝関節 (一般的)。 |
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・ 股関節 (一般的)。 |
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・ 足関節 (あまり一般的でない)。 |
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・ 肘関節 (あまり一般的でない)。 |
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・ 肩関節 (あまり一般的でない)。 |
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12-5-7. 麻酔と輸血 |
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全身麻酔で行います。事前に自分の血液を貯蓄することは行っていませんが、術前に貧血がなければ輸血が必要になることはあまりありません。 |
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12-5-8.止血管理 |
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手術前に血液製剤を輸注し、血中の凝固因子製剤活性の上昇度や時間経過による活性値の低下速度を確認して、手術時には持続的に血液製剤を輸注することで止血管理を行っています。 |
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12-5-9.リハビリ |
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術後のリハビリは最も大事になります。関節の動きが改善するかどうかはリハビリにかかっているといっても過言ではありません。関節を動かすことや動かしてもらうことに慣れていない血友病患者さんには精神的にも怖いものだと思いますが、リハビリを受けるという意気込みも手術を行う前の大事な適応のひとつだと思っています。 |
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12-6.関節固定術 |
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12-6-1 概略 |
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関節固定術は関節の動きを犠牲にするかわりに痛みをとることができる手術です。人工関節と違って感染を起こす可能性も低く、起こっても機能の著しい低下を来たすことは一般にはありません。そして入れ替える必要もなく一回の手術(固定に使用した金属を取り除く場合には2回)の手術で終了します。 |
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12-6-2 適応 |
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次の三つの点でこの手術適応は限られてきます。 |
| 1) |
一度関節を固定してしまうと、その後人工関節に入れ替えることはほぼ不可能である。 |
| 2) |
関節症を持つ血友病患者さんの多くは、一箇所の関節だけが変形しているということはなく、複数の関節が障害されています。その一箇所の関節を動かなくするとその隣の関節に負担をかけることになり、関節症の進行を助長することが危惧されます。たとえば左膝を固定すれば、左の股関節と足関節に負担をかけることになります。 |
| 3) |
特に足関節で関節症の進行とともに関節の動きが制限されて自然に関節固定がされてくる可能性があり、あえて手術で関節を固定しなくてもよい場合があります。 |
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また比較的適応になる状態としては2つが考えられます。 |
| 1) |
人工関節などを行った後に感染を起こして、再度人工関節を入れにくい場合 |
| 2) |
足関節の変形が一側だけあり、なおかつ関節が変形し足関節が動かなくなってきたのに痛みがとれない場合(距骨と踵骨の間で痛みが起こっている場合) |
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以上のようにあまり血友病患者さんには一般的な手術治療方法ではありません。 |